『れきし』クラス便り(2018年2月)

「山びこ通信」2017年度冬学期号より下記の記事を転載致します。

『れきし』

担当 吉川弘晃

通常授業では去年と同じく江戸時代に関する基本書をみんなで読み進めていますが(深谷克己『江戸時代』岩波ジュニア新書、2000年)、最初の2回の授業は自由研究の発表会にしました。4人の生徒さんは江戸時代に関する次のようなテーマを設定して研究しました。「江戸時代の武士の禄制度」、「シーボルト事件」、「朝鮮通信使と京都」、「三井高利」。各自、作成した資料と参考文献を持ち寄って、10分程度で報告を行いましたが、この際に講師が示したルールは3つ。①報告者は大きな声でゆっくり話すこと、②報告者は発表で参考にした情報源を示すこと(著者、書名、出版社、出版年度)、③聞き手は静かに注意深く報告を聞きながら、質問と感想を言えるように準備すること。生徒さんが皆、これらのルールをしっかり守ってくれたおかげで、教室は高校や大学のゼミさながらの熱気に包まれ、議論では講師も驚くほどの論点があがりました。また、中には詳しい図や写真を示しながら発表した生徒さんもいて、皆さんの理解を大きく助けました。さらに、近年の日本史研究に基づく教科書の内容が、社会経済や国際関係といった上記のテーマ選定に活かされているのも喜ばしいことです。

21世紀のIT時代は、インターネットや書籍で膨大な知識を手に入れやすくなった分、ただ事項を暗記するだけでなく、それらを自分なりにストーリーにまとめ、根拠を示しながら相手に伝えるという技術が必要になります。「れきし」クラスが、歴史の知識を増やすだけでなく、そうした技術の鍛錬を楽しく行える場になっていれば幸いです。小学生のうちから自分とは異なる他者の存在や視点に触れながら、世の中の様々な問題について歴史的に考える力を少しずつ身につけていってほしいと思います。