『ドイツ語初級』『ドイツ語講読』クラス便り(2018年2月)

「山びこ通信」2017年度冬学期号より下記の記事を転載致します。

『ドイツ語初級』『ドイツ語講読』

担当 吉川 弘晃

 講読クラスでは、去年と同じくPeter Blickleのドイツ中近世史に関する本を読んでいます。特定の分野を扱う論文スタイルの文章、原則として根拠を示しながら論理的に書かれているため、若干の専門用語や論理運びに使う接続詞を覚えてしまえば、文章を追うことはさほど難しくはありません。あとは細かいニュアンスの違い、特に接続法の部分をしっかり読めるかどうかが鍵になると思われます。接続法Ⅰ式は、論文ではしばしば自分以外の発言や情報を第三者として伝える時に使われますが、これに注意することは、筆者自身の意見と引用された情報を区別して理解することにつながるからです。

 初級クラスでは、基礎文法を一通り終えたということで、ZEIT紙の記事を取り上げ、語彙や文法を確認しながら音読と精読を行なっています。今読んでいる記事(“Sprechen Sie doch Deutsch!” ZEIT ONLINE 2017年8月23日付、24日編集)は、CDU(ドイツ・キリスト教民主同盟)の政治家イェンス・シュパーンの寄稿記事です。彼は、近年の外国人観光客への対応が行き過ぎて、首都ベルリンのレストランでしか注文できないということを批判しました。しかし、この発言がドイツの移民受入の政策に反対するものとして一部の槍玉に挙がり、それは「国粋主義」ではないかという声すら聞こえます。冷戦が終わって数十年、グローバリズムは移動の自由や文化交流の促進といった光を放ちましたが、他方で世界的な経済格差とそれに対する地域の反発という影を落としています。自国の首都で英語話者ばかりが優先されてしまうという状況をどう捉えるか。母語でのみ暮らす多くの人々はどうすれば良いのか。この問題は、英語とグローバリズムの時代に日本でドイツ語や他の外国語を学ぶことにどういう意味があるか、という我々自身の問題にもつながってくるでしょう。