「山びこ 通信」(2013/2月号)より、フランス語講読の様子をお伝えします(以下転載)。
『フランス語講読』 (担当:武田宙也)
このクラスでずっと読みついできたダニエル・アラスの『絵画のはなし』ですが、本書は今学期で一区切りとなります。
入門書という体裁をとりつつも、時にかなり専門的な内容も差し挟まれる本書でしたが、受講者の方の熱心な取り組みもあり、ここまでかなり順調なペースで進んでくることができました。また、内容の理解に関しても、個々の絵画論の玩味はもちろんのこと、著者アラスの思想そのものにもかなり近づくことができたのではないかと考えています。最近では、本書の内容から出発して、受講者の方とあれこれ繰り広げるおしゃべりも楽しみのひとつとなっています。
ここまでの歩みを振り返ってみても、決して急ぎ足であった感じはしません。むしろ一歩ずつ、着実に歩みを進めてきた、と言った方が正しいでしょう。はじめは一文ずつ、文の意味だけを考えながら読んでいき、それが一つの段落、一つの章というように、まとまった分量を経過するにつれ、著者の語っていることの全体が、立体的に浮かび上がってくる瞬間があります。山登りに例えるならば、紆余曲折を経て到達した頂から、これまでたどってきた道のりを一望するような感じでしょうか。それは、心地よい疲労感とともに、ある達成感をもたらすものです。
もちろん、こうした体験は、日本語による読書でも(とりわけ、少々難しめの本をよむときに)味わうことができるものですが、慣れ親しんだ言語と勝手が違う外国語では、より困難を伴うぶん、山頂にたどりついたときの喜びもひとしおです。このクラスでは、こうした喜びを分かち合うべく、やみくもに前進するのではなく、ときに後ろも振り返りながら、ゆっくりと歩みを進めてきたのです。
ところで、立場上は教える側になっている私ですが、授業のなかでは、受講者の方の鋭い質問から、逆にさまざまなことに気づかされた経験も一度や二度ではありません。その意味で、授業のなかで得られた理解や気づきは、この相互の教授の賜物であるといえましょう。このように、教える側も教えられる側も、ある意味で対等な立場でひとつのことに熱中できるということ、それがこの山の学校のすばらしいところなのではないかと思います。
「フランス語講読」では、春からはテキストを一新して、新たな頂を目指す予定です。また、「フランス語入門」でも随時受講生を募集しております。楽しくおしゃべりをしながら、山道を連れだって歩いていただけるお仲間の参加をお待ちしております。
(武田宙也)
(武田宙也)