西洋の児童文学を読む(2018/1/11)

福西です。本年もよろしくお願いいたします。

トンケ・ドラフト『王への手紙(上)』(西村由美訳、岩波文庫)を読んでいます。 今回の担当はE君です。第六章の二を読みました。

E君の要約

ヤロの態度が明らかに変わったことに気づいた。道の上にある小さな牧場で少年がフルートを吹いていた。そして上に登ると小屋があり、メナウレスが出てきた。ティウリはメナウレスと話すため、ヤロを外に出した。山をこえるために助手のピアックと一緒に行くことになった。ピアックは、食料、毛布などを用意した。夜、横になったが、眠れなかったので、ティウリは外に出た。そして、メナウレスといろんなことを話した。

他の生徒二人からも要約の発表がありました。次に、調べてきた語句を共有しました。Aちゃんが力を入れて、9個調べてくれていました。

そのあと、音読をしました。

共感した個所・好きな表現をホワイトボードに抜き書きしてもらいました。

メナウレスは賢者とうたわれており、ティウリは「何もかも知っていて、何もかも見抜いている」という印象を受けます。しかしメナウレス自身は「私は何も知らない。ただ推測するだけだ」と言います。得た情報をもとにして、彼の小屋を訪れた人それぞれにとって有益なアドバイスをするだけです。そして「わたしは間違っているかもしれない」と付け加えます。

ここで、推測と憶測の違いを思い出しました。

さて、みんなのお待ちかね、ピアックが登場しました。彼が年を偽るところがチャーミングです。彼は「平たいところには住みたくない」のに「下界に何があるか知りたくてうずうずしている」というアンビバレントな山人の気持ちを語ります。そのあこがれは、ティウリと出会ったことで、水を得た魚のようになります。「きっと騎士になれるよ!」と信じて疑わないピアックの真心から、ティウリはこの後ずっと心の支えを受け続けます。

すでに物語の中腹に差しかかっていますが、ピアックの存在感は、一度読んだ人には「ずっと前から彼が登場していた」と思われることでしょう。それほど、ティウリとピアックの関係は濃密です。乞うご期待です。

ヤロの心理的な変化も、注目です。彼は密偵であり、ティウリの命を狙っているわけですが、途中で断崖に落ち、ティウリに命を救われました(前回)。そのことで葛藤しています。

生徒たちは「彼は悩んでいる」「複雑な気持ちでいる」と言っていました。

ピアックが同行することになり、旅の道ずれが二人ではなく三人になったと知ったヤロは、「それは……それはよかった。」と言います。

この「よかった」には、いろいろな音色が含まれていると思います。