『ことば』1〜2年  山の学校ゼミ『調査研究』『倫理』クラス便り(2017年11月)

「山びこ通信」2017年度秋学期号より下記の記事を転載致します。

『ことば』1〜2年 山の学校ゼミ『調査研究』『倫理』

担当 浅野 直樹

 僕は昔から「新しい言葉」を覚えるのが好きだったんです。新しい言葉を覚えたら、途端にいろんなところでその言葉を目にする機会が増えるようになるという感覚がすごく好きでした。だから辞書をいっぱい読んで、新しい言葉を覚えて、さぁ、この言葉に次はいつ出会えるだろうと思っているのが好きで……。
その出待ち感の楽しさを読者にも味わってもらいたいというのがあって、あんまり日常生活ではなじみのない言い回しも、小説の中ではわざと使うようにしているんですね。小説で未知の言葉に出会って、そこで「どういう意味なんだろう?」と考え直す感覚を味わってほしかったりもするんです。あの言葉を覚えたのはこの小説だったよな、なんていうのは僕はけっこう覚えているほうなので、それが誰かにとって、僕の書いた本だったりするとうれしいな、というのもありまして。

 西尾維新他『西尾維新対談集本題』(講談社、2014)p.62

これは調査研究クラスで現在追いかけている西尾維新さんの対談からの引用です。彼は凡百のライトノベル作家とは異なる趣向を持っているように感じられます。上記の引用からもそれが垣間見えます。軽く読めるということがライトノベルの大きな特徴であり、日常生活ではなじみのない言い回しは軽く読めないからです。
このような新しい言葉との出会いは小学校の低学年あたりでピークを迎えると言えるかもしれません。というのも、ことば1~2年クラスでは受講生たちがあらゆる活動を通じて語彙を増やしていっていることが手に取るように伝わってくるからです。絵本を読む、クロスワードに挑戦するといったことはもちろん、「○○ちゃんは笑い上戸だね」といった何気ない日常会話からも新しい言葉を学んでいるようです。
大人になってからも、倫理クラスで行っているように、新たに思想を学べば新しい言葉を仕入れることができます。秋学期になってからだけでも、「無知のヴェール」、「コミュニタリアン」、「リゾーム」といった概念を新しく導入しました。