『将棋教室』クラス便り(2017年11月)

「山びこ通信」2017年度秋学期号より下記の記事を転載致します。

『将棋教室』

担当中谷勇哉

 時間が90分になったことで、最初の講座部分を短縮し、できれば3局行えるようにとやっています。
 今期の目標は、「より多くの駒を活躍させること」と設定しました。そのために、「駒落ち将棋」をうまく活用できたらと思っています。
 駒落ち将棋とは、上の級の子が角や飛車などの駒を最初から抜いて対局することで、一般的には、レベルを合わせて勝敗を拮抗させるために行われます。級が上がってきた子は、下の級の子と対局する場合に、この駒落ち将棋を経験することになるのですが、この教室では、単にレベルを合わせるという意味だけでなく、上手や下手の棋力向上も目的にしています。
 たとえば上手は、受けの弱い低級者を相手にした場合、飛車という最も強力な駒と銀のみで攻める、(原始)棒銀と呼ばれる攻め方を知っているだけで、その他の駒を全く動かさなくても気持ちよく勝つことができてしまいます。しかし、こういう攻め方ばかりしていると、駒落ちで飛車を落とした場合に、一気に棋力が下がり、下の級の子にコロッと負けてしまいます。これを経験していくと、他の駒を組み合わせて攻めの形を作ることを覚えていけます。
 また、下手にとっての駒落ち将棋は、相手の弱点を見極める練習になります。たとえば、相手に香車や桂馬がない場合、盤面の端の守りが弱くなります。何度か経験するうちに、自然とその筋に飛車や角などの戦力を投入することを体得することができます。
 駒落ち将棋というのは、レベル差が生まれた結果の偶然的な出来事ですが、今後はこの状況も利用して、生徒の棋力向上に役立てていけたらと思っております。