「山びこ通信」2017年度秋学期号より下記の記事を転載致します。
すべての道はラテン語に通ず 「ラテン語講習会」クラス便り
担当 山下 太郎
山の学校の古典語クラスの取り組みは、それぞれの先生の「クラスだより」をご覧いただくとして、私は5年前から取り組んでいる「ラテン語講習会」の現状についてお伝えしようと思います。
きっかけは、東京の知人から山の学校の分校を東京に作ってほしいと言われたことでした。最初はラテン語文法のクラスのみでしたが、今は講読クラスが主体です。文法クラスはお伝えする内容を必要最小限に絞り、全体を6回で終えるように工夫しました。そのときの教材をもとにして出来たのが、『しっかり学ぶ初級ラテン語』(ベレ出版、2013)と『しっかり身につくラテン語トレーニングブック』(ベレ出版、2015)です。
文法を終えた人向けにスタートしたのが、キケローの「スキーピオーの夢」の講読でした。ラテン語の知識ゼロからスタートし、6回の文法を終えた段階でストレスなく予習できるにはどうすればよいか。私が出した答えは、「すべての単語の説明と逐語訳を載せた資料を用意する」でした。作成したファイルを事前にメールで送って予習してもらいます。このときの資料に全文訳を添えたものが『ラテン語を読む キケロー「スキーピオーの夢」』(ベレ出版、2017)です。
受講者の実数は200人を超えました。大学の授業と違って、様々な職種の人、年齢の人が参加されるので私にとっても大きな刺激になります。最年少は静岡の中学生。小学校の卒業文集にラテン語の格言を書き、トイレに変化表を貼って勉強しているそうです。中国の留学生は古今東西の言語を学ぶ秀才で、まだ大学1年にかかわらず、『カティリーナ弾劾』の講読では正確な解釈を披露してくれます。彼は日中の若者が「古典、とくに西洋古典を学ぶべき」という意見の持ち主です。アメリカの古典学専攻の学生が二度参加してくれました。「講読のスタイルがアメリカと同じなので驚いた」とのこと。日本では英語をこのスタイル(文法訳読方式)で教えていると言うと、それにも目を丸くしていました。
「ラテン語講習会」を通じ、「すべての道はラテン語に通ず」を実感するこの頃です。(山下太郎)