福西です。『二分間の冒険』(岡田淳、偕成社)を読んでいます。
悟とかおりは、竜の館へ向かう途中、老人だけの村を通り過ぎます(6章「時間だけがすぎる村」)。
そこで、竜との戦いに敗れるとどうなるかを知ります。
牧草地をぬけ、森の小道に入るところで悟はもういちどふりかえってみた。ひくいおかにはもう茂樹老人の姿は見えず、夕ぐれの空の下に、牧草地と田畑がひろがっていた。かおりもならんでおなじ風景を見た。平和で美しい景色に見えた。黄金色にみのった稲穂が風にゆらいでいる。
「だれもいない。」
そうつぶやいて、悟は、この風景のなかに、いや、いままで見たどの風景にも、はたらく人の姿が見あたらなかったわけに気づいた。
竜のいけにえになった少年少女は、一瞬にして浦島太郎のように老人になってしまいます。その時間はみな、竜のうろこに変えられてしまいます。そして竜の魔法で、少年少女が「生きていればしたであろうこと」を竜が代わりに行い、その記憶だけが脳裏に返されるのでした。悟たちはそうなった一人、茂樹(クラスメイトそっくりの男の子)老人を目にして驚きます。
自覚なしに歳をとることの残酷さ。魔法にたとえられる便利さの功罪。考えさせられるメッセージがつまっています。
こうして悟とかおりは、竜の館にたどり着きました。物語の折り返し地点、100ページです。『二分間の冒険』でいうと、ちょうど一分が経ったところでしょうか。
私自身振り返ると、小学校の頃の読書に、こんなモットー(半ばジンクス)を持っていたことを思い出します。「100ページを越えたら、最後まで読んでいる」。みなさんはどんなふうにして本と付き合ってこられたでしょうか。
いよいよ、「集まりのぎしき」は終わり、ここから「戦いのぎしき」がはじまります。
子供たち六十人は二人ずつ、竜を相手取って戦います。その内容は「知恵の戦い」(なぞをかけあう)と「力の戦い」です。そのどちらかで、誰か一組でも勝利すれば、それまでに奪われた時間は元に戻るという話ですが……。