『ことば』3〜4年/4〜5年クラス便り(2017年6月)

「山びこ通信」2017年度春学期号より下記の記事を転載致します。

『ことば』3〜4年/4〜5年

担当 福西 亮馬

 今学期は俳句を中心に取り組んでいます。これまで通り、芭蕉や一茶などの句を紹介するとともに、『こども歳時記』(長谷川櫂/監修、季語と歳時記の会/編、小学館)を読んで、春と夏の季語を学んでいます。そのあと教室の外に出かけて、極力季節を目で確かめながら俳句を作っています。春はふらここ(ブランコ)、モクレン、桜、山吹、たけのこ、たんぽぽ、春雨。夏は若葉、こいのぼり、ひきがえる、蟻、青梅、びわの花、燕の子、五月雨などが詠まれました。
 季語とはイメージの凝縮された単語です。それなので、使わなければいけないというよりは、使うことで字数上の大きな得をします。また俳句は詩なので、様々に言いたいことをあえて言わずに圧縮した「や」や「かな」などの切れ字を使うと、効果的に余韻を残せます。そこで最初のステップとして以下のような簡易な方法を教えました。

1)季語を一つ、切れ字も一つ入れると、より俳句らしくなる。
2)二つ以上季語や切れ字を入れると野暮になる。(避ける)
3)季語が4文字の場合は、上五に「〇〇〇〇や」で試す。
4)季語が3文字の場合は、下五に「〇〇〇かな」で試す。
5)季語と物の名前とは極力離して置く。
6)季語には説明不要。季語のために作文しない。

1)~4)は中学年、5)と6)は高学年向きのアドバイスです。もしこれまで「たんぽぽは」としてきたところを「たんぽぽや」とし、「さくらだね」を「さくらかな」とするだけでも十分効果があります。ぜひ試してみてください。次に生徒が意識的に「や」を使った例を挙げます。

アメンボやすいすいおよぐ平およぎ  Uta(3年)
アメンボのすいすいおよぐ平およぎ

 初句(原句)の方が良く、二句目はわざとそれを惜しくした例です。一字違いですが、大きく異なる点があります。それは響き方です。試しにそれぞれを一回音読したあと、二回目は上五(「アメンボや」の部分)だけを声に出し、あとの部分を黙読してみてください。するとどうでしょうか。頭の中で「や」の音は終わりまで重なってこなかったでしょうか? もし分からなかったら、今度は鐘を打った後のように「やー……」と口ずさみながら字面を追いかけてみてください。特に句のイメージを邪魔しなかったと思います。しかし「の」の方はぶつぶつと句のイメージを切るか、「の」が消えてしまうかのどちらかだったと思います。というのも、「アメンボの平およぎ」と分かってしまった二回目以降の詠みでは「の」の音はほとんど用済みだからです。そして詠みの繰り返しにまだ耐えられる方が、飽きのこない歌という判定になります。また「アメンボ」は夏の季語ですが、初句では、「や」は句全体に響いており、「アメンボ」が季語のまま何の制限も受けずに運ばれていって、「平およぎ」とコツンとぶつかっています。二つの名詞のぶつかり方の意外さがこの句の面白さであるとすると、切れ字の「や」はあたかも「アメンボ」と「平およぎ」とを乗せる「水面」の役目を果たして効果的です。一方、「アメンボの」とするとせっかくの季語が「平およぎ」を限定する修飾語になり下ってしまいます。以上が二句目の惜しくなる点です。
 このようなことはしかし、言葉ではなかなか説明しづらいものがあります。それで俳句を作る前には「古池や」「閑さや」などの古人の俳句をお手本として紹介しているとも言えます。俳句作りにおける気分と型はどちらも大切です。特に4年生はその両方に自覚的になってきて、俳句の数は減りますが、1年生、2年生、3年生の時よりもレベルアップしていると感じます。もし切れ字を意識できるようになればさらに高みを目指せるでしょう。

 俳句以外の取り組みでは、3~4年クラスは「のみのピコ」や「推理クイズ」をしました。4~5年クラスは、『おおかみ王ロボ』(シートン、白木茂訳、全国学校図書館協議会)を読み終えました。次は『二分間の冒険』(岡田淳、偕成社)を読みます。どちらのクラスの取り組みも今後が楽しみです。どのような共感が生まれるか、山の学校のブログや秋学期の山びこ通信でまたお伝えします。