数学が生まれる物語を読む(2017/6/21)(その2)

福西です。この日、大変面白いことが分かりました。帰納的な発見です。生徒たちが各自でさらに研究してくれるといいなと思います。

Eさんがp47の章末問題2を解説していた時のことです。

問2

1から100までの数で、2の倍数はいくつあるか。3の倍数はいくつあるか。2の倍数でも3の倍数でもないものはいくつあるか。

Eさんはベン図(写真右側)を描いて、解説を始めました。以下はその主旨です(実際にはもっと詳しく倍数のイメージを線図を使って説明してくれました)。

a:2の倍数 個数は100÷2=50個。

b:3の倍数 個数は100÷3≒33個(切り捨て)。

n:全体 個数は100個。 ※この全体を考えることが重要!

n-(a+b)だと、引きすぎてしまう箇所がある。

それはAかつB(2の倍数かつ3の倍数)の部分。

これは結局、6の倍数のことなので、その個数は、100÷6≒16(切り捨て)。

よって聞かれている数は、

100-(50+33)+16=33 個

となります。

さて、Eさんが質問がないか尋ねたところ、M君が次のように質問しました。

「2の倍数でも3の倍数でもない個数が33個。3の倍数も33個。

33個で同じなのは何か関係がありますか?」と。

Eさんは帰納的に、全体の数を150にしたり10001に変化させて調べ始めました。最初は「偶然の一致であること」を示すつもりだったのですが、なかなかその反例が見つかりませんでした。そして見つかっても、それが高々1個ちがいになりそうだ、という見当をつけることができました。

果たして(全体の数が)どんな場合でも成り立つのでしょうか?

帰納的な実験の次は、普遍性の検証です!

M君とEさんの予想

1からn(任意)までの自然数について、3の倍数の個数をbとし、2の倍数でも3の倍数でもない数の個数をxとする。すると、x=bか、x=b+1のいずれかである。

もしこの予想が正しければ、「おおよそで知りたい時は、3の倍数で計算した方が簡便だ」ということが言えます。

全体の数が150までの場合

正攻法 150-([150/2]+[150/3])+[150/6]=150-(75+50)+25=50

3の倍数 [150/3]=50

一致!

※ここで[ ]はガウス記号という「余りを切り捨てる記号」です。

 

全体の数が10001までの場合

正攻法 10001-([10001/2]+[10001/3])+[10001/6]=10001-(5000+3333)+1666=3334

3の倍数 [10001/3]=3333

高々1違い!

こういうことが「帰納的な冒険」だと言えるでしょう。

最初はEさんも私も、M君の質問に対して「え?」となり、偶然の一致だと思っていました。それなのに、そうではない(なさそうだ)というどんでん返し。驚きました。心が躍りました。

このワクワクは、M君が「なんでだろう?」と質問したおかげであり、Eさんが「実際に確かめてみよう」と手を動かしたおかげです。

私もさっそく家に帰ってから、続きを考えました。そして、次のように文字をおいて考えれば予想を証明できることが分かりました。

1~nまでの数について。2の倍数の個数をa、3の倍数の個数をb、6の倍数の個数をcとおく。

nを以下のように場合分けする:

i)x=6m、ii)x=6m+1、iii)x=6m+2、iv)x=6m+3、v)x=6m+4、vi)x=6m+5。

ここで、n=100はv)の、n=150はi)の、n=10001はvi)の特殊な場合として含まれています。

 

【Eさんと(何年後かの)M君へ!】

もしこの問題で心に火がついたならば、ぜひ証明を試みてください。これぞ月面の一歩です!

 

【追伸】

ただし、倍数の選び方で、2と3という選び方以外は、成り立たないようです。その意味では、偶然だったとも言えます。

1からn(任意)までの自然数について、qの倍数の個数をbとし、pの倍数でもqの倍数でもない数の個数をxとする。すると、x=bか、x=b+1のいずれかである。

この命題が成り立つのは、(p-1)(q-2)=1を満たす自然数解すなわち(p,q)=(2,3)の時のみである。