浅野です。
イヴァン・イリイチ著、金子嗣郎訳『脱病院化社会―医療の限界』(晶文社、1979)を読みました。
普段あまり聞くことはないものの言われてみれば確かにそうかもしれないという視座がいくつもありました。
医療によって生じる病気という意味の医原病という概念を提唱したのがこのイリイチです。
結核などの感染症で死亡する人が減ったのは医療のおかげというよりも栄養や衛生の状態の改善による部分が大きいと論じられます。平均寿命がのびたといっても最高寿命がのびたわけではないというのも同じロジックです。
医師という専門家の手による証明書が就業や刑罰の可否などいろいろなことを決めるようになってきているとも指摘されます。加えて医療従事者が疾病を作り出し、健康ケアが大きな産業になっているとも言われます。
そして人々は自ら死ぬ能力を喪失していると論じられます。
彼の考えを全面的に実践するのは困難かもしれませんが、そのような考え方があるのだと知っておくことは大事だと思います。