福西です。
初回は、序章と1節まで進む予定です。まだ2節には入りません。ただ、範囲を「1節と2節」と思って予習した人がいるかもしれないので、前稿に追加して書き出しておきます。ご参考までに。
第一章 指令 2 見知らぬ人からの依頼
【要約の例】
ティウリは、規則を破るべきか葛藤する。修道院の外で何度もささやく声に最初は動じないつもりだったが、声の主が本当に窮地に陥っているかもしれないと考えて決心する。ティウリはドアを開ける。
ささやく男は、老人で、ウナーヴェン国王への手紙を持っている。老人は、「王国全体の安寧がかかっている」と、手紙の重要性と、敵に狙われていることを伝える。ティウリは、騎士としてすべきことは何かを自分で考える。そして騎士に「明日なる」ための規則を守ることも重要だが、「今実行する」ことの方がより重要だと判断する。手紙をしっかりと胸にしまい、白い盾の黒い騎士に渡すことを約束する。そして馬の手配先と合言葉とを教わる。
老人はティウリが適任である理由を述べる。「騎士であって騎士でない、目立たずかつ任務を果たしおおせる人物でなければならなかった」と。そして規則を破って騎士になれないと言うティウリに、「まさしく、りっぱな騎士になれる」と請け合う。
ティウリはただ一人、馬を取りに急ぐ。彼はこの時はまだ三時間あれば戻って来れる、明日の叙任式には間に合うと思っている。
【前節からの疑問】
なぜ作者は「とても大きな声」ではなく、「とても小さな声」(p24)としているのか?
→それでいて、なぜ読者には大きく(重大に)響いて感じられるのか?
→ティウリの心にもその声が大きく響いている?
ティウリは耳をすました。ふたたび静まりかえった。しかし、あの声が、まだ、耳にこだましている。二度と忘れられないような声だった。だが、なぜ、よりによっていま? なんでこんなときに、あの哀願の声を聞かなくてはならないのだ? あの声に答えるわけにはいかないが、答えなければ心安らかではいられないだろう。(p25-26)
→針の音を聞くような「静寂」の効果
小さな声をかき消そうとすればするほど、これからなろうとする者(理想)とのギャップが大きくなる?
→静寂が葛藤を前面に描き出している
【ティウリが心に誓う騎士の役目とは?】
・高潔で、協力を惜しまないこと
・善なるもののために戦うこと
・王を助けること(=王の代わりに誰かを助けること)
【なぜささやき声なのか?】
・見知らぬ男の「場」への配慮か?
↓別の理由があるのでは?
・見知らぬ男には、敵(追手)がいるのでは?
・見知らぬ男は、物理的に大きな声が出せない?(老人?)
【ティウリの目の働き】
・物理的な目
ろうそくの火、暗闇、不動の友人たちの影
・心の目(考える)
疑心暗鬼と葛藤
【ティウリの静寂での耳の働き】
・物理的な耳
助けを求める声が現実に聞こえている
・心の耳(信じる)
騎士になるためには規則を守らなければならない
→空耳か。きっとそうだろう!(希望的観測)
→ティウリは耳をすました。ふたたび静まりかえった。=心の耳をふさぐために物理的な耳を開けている
→しかしティウリの内面で、騎士(理想)に対する思いが強ければ強いほど、声は蘇ってくる
→そのようなティウリだからこそ、託された手紙の任務に耐えうるのだという読者の応援が、すでに始まっている
【感想】
1)二種類の「信じる」
・「正しい信念」 ブレない言動、芯の強さ、一度決断したら後悔しないこと
・「誤った信念」 希望的観測、気付かぬふり
2)二種類の「疑う」
・「葛藤」 考える、よりよくするために努力する
・「疑心暗鬼」 思い込み、余計な詮索、くよくよする
3)「さあ、急がなくては」と言う時点でのティウリに、後ろ髪を引かれる思いはあったのか?