福西です。
2017年4月よりスタートする、『西洋古典を読む』(中学・高校生クラス)の進め方をご案内します。(2017/3)
まずテキスト(セネカ『人生の短さについて』茂手木元蔵訳、岩波文庫)を入手していただき、春休みの間に全体を一読しておいてください。そこで、気になった個所をアンダーラインしておいてもらうと、後での音読・再読がさらに楽になります。
1)授業でもう一度音読します。
2)要約し、発表します。(要約は予習で作っておくことが望ましい)
3)訳注を確認します。
4)固有名詞や時代背景について講師から補足説明します。
5)本文に出てくる他作品の文言の出典をフォーローします(可能な限り※)。
6)共感した個所を抜き書きして、読書ノートを作成します。
7)6)について、もし生徒からの質問が出た場合は、可能な限り、原文(どうしてそのような日本語訳になるか)の説明を加えます。
8)他の翻訳を複数見比べて、日本語の厚みを確認します。※※
9)テキストを踏まえて、それぞれが考えを述べます。
10)講師がそれについてさらにコメントします。
11)以上を持って、自分の考えをより深めます。
12)最初に作った要約を書き直し、固めます。
13)作品の裾野について。当テキストの影響を感じる後代(現代)の作品についての意見交換。
1回で、だいたい2章ずつ進む予定です。(全20章)
※ たとえば、「生は短く術は長し」には、註に「ヒッポクラテス『箴言集』1.1」とあります。多分、多くの人がこれについて「もっと知りたい」と思うのではないでしょうか。私が調べたところでは、以下のようでした。
Ὁ βίος βραχύς, ホ・ビオス・ブラキュス
ἡ δὲ τέχνη μακρή, ヘー・デ・テクネー・マクレー
ὁ δὲ καιρὸς ὀξύς, ホ・デ・カイロス・オクシュス
ἡ δὲ πεῖρα σφαλερή, ヘー・デ・ペイラ・スパレレー
ἡ δὲ κρίσις χαλεπή. ヘー・デ・クリシス・カレペー(ヒッポクラテス『箴言集』1.1)
人生は(Ὁ βίος)短い(βραχύς)、
それでいて(δὲ)技術は(ἡ τέχνη)長い(μακρή)、
それでいて(δὲ)チャンスは(ὁ καιρὸς)鋭敏(タイミングが短い)(ὀξύς)、
それでいて(δὲ)トライ(経験)は(ἡ πεῖρα)躓きやすい(σφαλερή),
それでいて(δὲ)判断(分離)は(ἡ κρίσις)難しい(χαλεπή).
(訳は私がつけた試訳です。ギリシャ語、ラテン語を学びたい方は、ぜひ山の学校のクラスへ!(^^)(私もそこで学びました))
※※ 今回は茂手木訳(岩波)の他に、大西訳(岩波)、中澤訳(光文社)、杉浦訳(PHP研究所)とその註も参照します。日本語として一回読むだけでは、「何となく」分かった気になりやすく、読み流してしまいがちです。そこで、「ちょっと待って。ここは、他の人の訳ではどうなってるのかな」など、なるべく一行の日本語に時間をかけ、厚みを持たせようと思います。
十分にフォローできるわけではありませんが、こんな感じに、分からないところはペンディングにしながらでも、深い興味で、テキストの森を開拓しつつ、ゆっくり、ゆっくり進もうと思います。
中学生・高校生の奮ってのご参加をお待ちしています。
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