「山びこ通信」2017年度冬学期号より下記の記事を転載致します。
『新約ギリシャ語初級』
担当 堀川 宏
このクラスでは引き続き『マタイによる福音書』を読んでいます。Nestle-Aland版で毎回1ページほどというスローペースで進んでいて、もうすぐ第12章に入るところです(2月初頭)。少しずつではありますが、振り返るとたしかに進んでいるので、来学期はこの歩みをもう少し先まで伸ばしてみようと思います。
第10-11章はギリシャ語を直訳するだけでは意味が不明瞭で、表現の背後や間隙に内容を補いながら読む必要のある箇所が多かったように思います。そのような「難所」を読んできて思うのは、難解な箇所だからこそ、まずは文法的な知識に裏打ちされた正確な直訳力が必要だということです。
正確な直訳は「しっかりした足場」に似ています。テクストの読解を試みていると、時として——あるいはしばしば——表現を前にして踏ん張ったり、あるいは掴みかけている意味をめがけて跳躍したりする必要が生じます。そんな時、直接対峙している文に対する直訳が覚束ないと、踏ん張ることも跳ぶことも上手くいきません。しっかりした足場に寄って立ち、思考し判断する——そのような粘り強い読解力をつけてゆくのが今後の目標です。