「山びこ通信」2016年度秋学期号より下記の記事を転載致します。
『中学英語』(1~2年)、『中学英語』(3年)
担当 吉川 弘晃
中学英語のクラスは、春学期までの2年生2人に加えて、1年生1人が新しく加わり、今では生徒さんは合計3人になりました。クラスが賑やかになったということで、授業ももっと賑やかにしていこうと、今学期は音読練習に特に力を入れることにしています。
最初の10分で単語テストを済ませた後、各回ごとに簡単な例文集を配り、軽く解説を加えた上で講師と生徒さんが一緒に音読していきます。内容は中1と中2の単元から交互に引っ張ってくるので、中1にとっては音を通じての予習、中2にとっては復習の良い機会になります。音読が終わると、今度は講師が例文の一部を言い換えて、生徒さんに即興で作文練習をさせます。現在形を過去形にして言いなさい、主語をIからheに変えて言いなさい、「今朝に」を「今晩に」に変えて言いなさい、といった具合です。だらだらとでも可能なドリル練習と違って、口頭練習では一定の集中力が求められるので、英語の文章や音が頭に強烈に残ることになるでしょう。また、その日に学んだ単語や文法事項を使って自分で作文を宿題として書いてきてもらうことでスペリングの練習も行うようにしています。
中学3年生のクラスでは、やや高度かつ長い英語のテキストを精読する形式が続いています。今学期に挑戦するのは、かの英文学の王様ディケンズの『二都物語』の簡易版(“Oxford Bookworms Library Level 4: A Tale of Two Cities”)です。前学期の『ブレイブ・ハート』では中世スコットランド史を扱ったのに対し、今回は18世紀末、フランス革命前夜の英仏(ロンドン・パリ)両国を扱います。未だにプラスイメージで語られがちなフランス革命ですが、この物語の主人公たちは革命がもたらした暴力と流血に国境を越えて巻き込まれていきます。そこに至るまでの国際政治や社会の動き、現在とは全く異なる革命以前の人々の価値観を丹念に追うことで、一つの歴史的事件を様々な角度から立体的に見られるようになります。そこで、授業では文法・語法の一つひとつの事項に注意しつつも、こうした歴史的背景にも触れることで、幅広い学びのための「精読」を心がけているというわけです。小説なので会話のシーンも多く登場しますが、そういう箇所では遊び心を働かせて、訳語一つにこだわってみると授業に潤いが生まれます。unfortunatelyを「あいにく」と約した生徒さんのセンスには講師も脱帽しました。