『ことば』2〜3年 クラス便り(2016年11月)

「山びこ通信」2016年度秋学期号より下記の記事を転載致します。

『ことば』(2〜3年)

担当 福西 亮馬

 秋学期では、俳句、推理クイズ、漢字を主にしています。
 俳句では、学校の体験談を聞いたり、外の光景に季節感を得て、なるべく実際の印象を先に持って、それを句に閉じ込めることをしています。「閉じ込める」というのは、ポジティブな意味です。言いたいことがもっとあるところをぎゅっとつかまえて、純化するということです。これと合わせて、五七五というリズムを大事にします。指折りそれに直すことだけでも十分、2年生には大きなことです。内容とリズムは、作詞と作曲のようなものです。両方あって歌になります。

 はの水を かさにうつして 水ためよ Yu

 たとえばこれはYu君が作ってくれた作品です。「かさをさして歩いていたら、もみじの下を通りがかった。いたずらに下からつついてみたら、雨がぱらぱらとこぼれ落ちてきた。かさをかたむけて、どれだけその背中に乗せられるか、やってみた」ということですが、もちろんそれは作文です。それに対し先の俳句は音楽です。中七の七音が、上下とうまく連絡し合い、一つの調和のとれたメロディを奏でています。音楽なので、繰り返し、味が出てきます。そして「に」のところに意味上の休符が、雫のよどみなさを表現したいというYu君の心がぎゅっとつまっていると感じます。芥川龍之介の『戯作三昧』の中の言葉を借りれば、「神人と相搏つ」、俳句に対する三昧の境地が表れているように思います。この日は乗り乗りで、「今日はいっぱい俳句ができるなあ」と言っていた日でした。
 雨の日に実際の雨を見て、その経験が俳句に結実したこと、そのようなことをクラスでは一緒に喜んでいます。形式と内容とが助け合って、音楽になることを期待しています。

 また最近の生徒たちのブームは、漢字です。成り立ち(初期の漢字)で書いた暗号文書を用意し、ヒントとなる本を引き引き、探偵気取りでそれを読み解いています。「『思』には、『心』があるなあと」というのは、Rinちゃんの言葉です。それを印象深く耳にしたこの頃です。