福西です。次の俳句を紹介しました。
遠山に夕日一すじ時雨かな 蕪村
遠山に日の当たりたる枯野かな 虚子
この日(11/8)は、前の日が立冬(11/7)でした。ちょうど雨も降りました。時の雨と書いて時雨。朝時雨、夕時雨、小夜時雨。どれも冬の季語です。(あとでした「季語かるた」に登場させました)。
二句目について、Rhei君が「日は夕日のことや」と言いました。本歌取りの可能性をしてくれたわけで、なるほどと思いました。
その後、「季語かるた」をしました。
今はちょうど秋と冬の間の季節。そこで、秋と冬の季語をまんべんなく散らしてみました。そして札の裏に季節を書いておき、札を取った人に「それがいつの季語か?」を当ててもらいました。外れたら残念、当たったらはじめてその札がもらえます。そういうルールでしてみました。
生徒たちの中でも「それは冬だろう」「いやいや、秋だろう」と意見の分かれるものが出てきて、わいわい言いながら札をめくったことが面白かったです。「空っ風」、「北風」、「白菊」、「ふろふき大根」、「寒オリオン」も意外と自明ではありませんでした。(白菊以外は冬の季語)
ちなみに「蓑虫」を私は「冬?」と思っていたのですが、秋の季語でした。
キリギリスは漢字で「螽斯」と書きます。「冬に虫三つ」とありますが、秋の季語です。まぎらわしいですね。これを取って、季語が外れてゲットできなかったSちゃんは、「なんで!? 『ころもかたしき』やんか!」と言っていました。
カーディガン、ジャンパー、手袋、耳袋などは冬。あと、「牡蠣鍋」「寄せ鍋」「あんこう鍋」など、鍋系も冬です。遠慮がちに構えていたMちゃんも、カーディガンなどの服系に対しては、素早く手が動いていました。
「蚯蚓(みみず)鳴く」は、先週も見たように、秋の季語です。これはRhei君がとっていました。「朝顔の実」は秋。「冬近し」も秋です。
「金雲雀(きんひばり)」は、秋。これを取ったT君は、「金が秋のイメージだから」と言っていました。
おまけ札で、「山笑う」「山したたる」「山よそおう」「山眠る」も混ぜておきました。それぞれ春夏秋冬です。
ブランコの意味の「鞦韆」(しゅうせん)は、秋という漢字がありますが、春の季語です。「ふらここ」のバリエーションです。「ふらここと風ときょう走5時5分」でなじみのあるSちゃんが取りたがっていましたが、残念、M君に取られました。この日もM君は強かったです。
残りの時間で、自分たちのイメージで思い思いに季語を作ってもらいました。来週にそれを並べて楽しもうと思います。
ところで、『合本・俳句歳時記』(角川学芸出版)の夏・植物の「万緑」を引くと、
万緑(ばんりょく)
木々の緑が深まり、生命力に溢れる様子。王安石の「万緑叢中紅一点」に基づく。中村草田男が用い、一般化した。
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
とあります。
このように、新しい季語を作った人は、名前が残ります。「いいと思ってどんどん真似する人が出てきたら、それを最初にした人の名前が残るんだよ」と言うと、T君ががぜん目を輝かせていました。「静電気は季語になるかな」と言っていました。
そういう瑞々しいドキドキを何より大事にしたいと思います。