今回は、南北戦争後のアメリカと19世紀の文化を中心に議論していきました。
南北戦争ののち、憲法修正第13条が実施され、これによって奴隷制度は廃止されました。
他方で、合衆国に再統一された南部の諸州では黒人の権利を制限する州法が制定され、いわゆる「黒人差別」は公然と行われました。
また奴隷でなくなった黒人たちが、小作人として経済的な従属化におかれる状況も、すぐには変わりませんでした。
表面上の変化と本質的な変化、それらに「時差」があることを理解しておくことは、歴史の理解を深めるのに重要な点です。
歴史はいきなり変化することは稀です。しかし、少しずつ確実に変化していくのです。
このことは、文化の流行の変遷を見ることでもわかります。
ルネサンス以降の理性を重視する古典主義は、理性や調和を重視していました。
しかし、その形式的な美を批判するロマン主義が、19世紀に入ると台頭していきました。
個性や感情を表現するロマン主義はナショナリズムの影響も受け、逆に影響を与えるものとして、現実世界にも相関するものだったのは、面白いと思います。
しかし、こうした過激な主張に対して、現実をありのままに表現しようとする写実主義、その中でも負の部分を描きだそうとする自然主義が発展してきたのです。
始点と終点だけを比べれば、人々の社会の捉え方がかなり変わりましたが、それには約一世紀かかりました。
普段の生活ではすぐには実感できなくても、変化が着実に起きていたのです。
逆に言えば、普段の生活で気付かない変化に気付かせてくれるのが、歴史を知る醍醐味なのでしょう。
来週は、アジアを中心に、ヨーロッパが進出して行く過程を見ていくことで、「帝国主義」について考えてみたいと思います。