福西です。
昨日のクラスで3年生たちが作った俳句です。
T君
虫の声 秋の夕ぐれに 聞こえるよ
秋の日に 小鳥さえずる 夕やけに
十五夜の お月見の夜 きれいだな
T君の上二句は、虫の声や小鳥のさえずりという「音」を使って、「空気」を描いています。「秋の風」と言ってしまわない、その繊細さに感じ入りました。この日T君が注意していたのは、秋の「気配」なんだなと思いました。
また月を詠んでくれたのはT君だけでした。その時に見えないものを、よく思い出してくれました。その日、私も月を見ながら帰りました。
Mちゃん
さむくなり 明るい時間が あまりない
夏がすぎ とてもすずしい 秋がくる
葉がおちて 地面はかれ葉で いっぱいだ
Mちゃんの初句は、日が落ちたばかりの「夕明かり」というタイミングにできました。Mちゃんがブランコに座って肌で感じた温度が、雲と青さとの割合、光の量と結びついてできています。「あまりない」の写実性に共感を覚えました。
Mちゃんの俳句を、私はこの日から、はじめて見せてもらうことになります。次にどんな俳句を作ってくれるのかが楽しみです。
Sちゃん
夏休み おわって切ない かれはのように
切ない日 葉がちらちらと 5時5分
かわらにね ちらちらちらと おちてるよ
いすの上 かれはがじゃまで すわれない
赤い葉が ぼうしみたいで かわいいね
ファルコン号 上にのって 5時の風
えんていで プールの上に 5時15
赤くない 赤とんぼが とんでるよ
Sちゃんは額田王の春秋問答歌に「切ない」と評じてくれました。それが俳句にも出ています。「赤くない赤とんぼ」というのは、実際のアキアカネが、夏に飛ぶナツアカネのそれよりも黄色いことをさしています。赤さの観念を一度壊しているところが良いです。
「5時の風」もカッコいいです。
M君
ゆうやけで そまる雲色 北へ行く
ゆうやけの オレンジの木 光そむ
すずしさを かんじる秋の ゆうやけよ
赤葉たち 地面に落ちて 友たちと
緑葉と 冬に近づく 空の色
「北はどっち?」とM君がたずねた理由が、この俳句なのだと、後で知りました。「そむ」は染まるの意です。「友たち」には「友達」ではない、こだわりがあります。
最後の句で、「近づくは時間の流れを、空は空間の広がりをあらわして、アインシュタインの時空みたいだね」と私が言うと、M君もにっこり応じてくれました。
R君
いまもみた むかしの風けい なつかしい
上見たら いろんな雲が どこまでも
黒い雲 明日はきっと 雨がふる
夕やけに おちばが「ヒラッ」と おちてくる
だいだい色 まだまだはっぱは 青色だ
R君は初句で、2年生の時を思い出しています。「上見たら」に、水平から垂直方向への転換がうかがえます。「いろんな雲」というのは、本当に一言では言い表せないものでした。「どこまでも」は、R君の名前の、「遼」にも通じますね。
またR君の最後の句は、みんなが教室に戻ろうとしてからも、「もう1枚作りたい」と言って書いてくれました。感慨深い一葉です。