『ロボット工作』クラス便り(2016年6月)

「山びこ通信」2016年度春学期号より下記の記事を転載致します。

『ロボット工作』

担当 小坂 諒

 「ロボット好きの少年」というのは、いつの時代も変わらないようで、歳は離れていますが自分と似た生徒さんが多く、この授業では小さい頃の自分に当時は知らなかったマイコンというものを使った電子工作を教えているような気持ちになります。最近は授業が始まる前に、誰かが持ってきたドローンで遊ぶのが恒例になっています。今では私だけがドローンを持っていない状況です。私を含め、その場にいる全員がドローンをはじめとするラジコンが好きという状況は非常に良いことです。というのも、モーターがどのように回転していて、それが躯体の動きにどのような作用をもたらすかを操作して遊んだ上で知っているため、マイコン及びプログラミングの必要性を理解していて、仮にプログラムを書いたことが無くても、マイコンにどのような命令を送ればいいかを知っているからです。ほんの短い時間ですが、この時間がある意味この授業のメインでもあると思っています。
 新しく2人の生徒さんを迎え、3人の生徒さんとarduinoを使った電子工作をしています。DCモーターが2つあり、それらをarduinoで制御し、左右のキャタピラを動かす戦車のようなロボットを作っています。まず躯体を組み立ててモーターを取り付けました。私が何も言わなくてもラジコン好きの生徒さん達はとりあえず、この状態でモーターに電池を繋いでいました。もちろん単に繋いだだけなので、一定のスピードで回転して、離せば止まります。当たり前のことですが、電池だけでは動かすことは出来ても制御が出来ません。しかし、モーターがキャタピラを回転させて机の上を走っているという光景はラジコン好きならワクワクする光景であり、そしてただ前に進むことしか出来ないロボットをどう操作できるようにすれば楽しいかを考えさせてくれる光景でもあります。とりあえず電池を繋いだあとは、余っていたスイッチを見つけて、ブレッドボードに取り付けて、簡易コントローラーを完成させていました。今後はarduinoで制御するのでスイッチでロボットを動かすことはありません。つまりスイッチはいずれ取り外すことになります。作業の流れだけを見るとこれは無駄な事をしているように感じますが、決してそんなことはありません。春の段階では、躯体を作り、モーターを取り付け、arduinoを乗せ、配線を済ませ、そこから動かしてみようと考えていました。しかし、それぞれの段階で、とりあえず無理矢理にでもロボットを動かしてみるというのは、まず第一に楽しいことで、そして現状を把握するという意味でも大切なことで、間違いなく次のステップへ進むために重要な役割を果たします。これはロボットに限らず何かを作る上で非常に重要な姿勢だと感じます。
 前学期から引き続いて作っている生徒さんは既に加速度センサの傾きでロボットを制御することができたので、サーボモータを使った砲台をどのように取り付けてどのように操作するかを検討中です。どのように弾を発射するかまで考えてきてくれて、既存のパーツでは作れなさそうなので、うまくいくかどうかはわかりませんが3Dプリンタでパーツを出力する予定です。とりあえず作ってみるという意味では、簡易的な3Dのモデリングの授業もできたらいいのですが90分という短い時間ではなかなか難しいでしょう。
 生徒さんごとにそれぞれ違う進め方があり、今日の授業は全員がこれをやるという予定は立てないので手一杯な部分はあるのですが、「ロボット好きの少年」が「ロボットを作ることが好きな少年」になってくれるように力を貸せたらなと思っています。