「山びこ通信」2015年度冬学期号より下記の記事を転載致します。
『中学英語』(1年)『中学英語』(2年)『高校英語』(2年)
担当 吉川 弘晃
一つの言語を学ぶことは一つの世界を知ることでもあります。さらに、英語やラテン語、古典ギリシア語、漢文といった特定の地域や民族の枠を越えて広く流通する言語の場合、その学びは一つの世界にとどまらないアクセスを与えてくれます。今や、英語が出来れば世界狭しと活躍できることは確かですし、ラテン語が出来れば古代~近世のヨーロッパの知識人とも時代を越えて対話することが出来るでしょう。
しかしながら、いかにコミュニケーションの道具が優れていたとしても、伝える内容が普遍的だったり興味深いものでなくては、言葉はメディアとしての役割を発揮できません。英語を学ぶ際もまた然りです。中学1年のクラスでは、名詞や動詞、形容詞といった文章を読むための基礎を確認しながら、「イソップ寓話」をテキストにして音読を行っています。まだまだ分からない単語も多く、動詞の不規則変化や未知の文法事項に驚きつつも、生徒さんは寓話のストーリーと繰り返しの音読をもって、英語の表現に親しんでいるように思われます。細かい日本語の意味を理解してもらうだけでなく、文章のつながり(接続詞)やストーリー展開の決まりごと(起承転結)などを意識してもらうことで、広い意味での国語力を早いうちから身につけてもらうのも大きな課題の一つです。
英語がグローバル言語としての地位を獲得して以来、英語ができれば地球上のあらゆる人々とコミュニケーション可能になるかのような言説が溢れていますが、他方で英語もまたヨーロッパの西端の一地域から始まった言語であることを忘れてはいけません。私たちが当たり前のように習う文法や単語の一つひとつは1000年以上かけて、現地の人々が日々の生活の中で少しずつ育んで変化させていったものであり、言うなれば、その土地の歴史の玉手箱なのです。中学2年生のクラスでは、ブリテン島の歴史について簡単な英語で書かれた本を、去年度から一緒に読み進めています。以前は南側イングランドのアーサー王伝説の本を読破したのに対して、今回は北側スコットランドのウィリアム・ウォレスという英雄を扱った本を読んでいます。以前のものと比べて文法や単語のレベルが上がっているのに加え、13世紀のブリテン島及びフランスの国際関係や、中世ヨーロッパの習俗、軍事史的背景など様々な知識が必要になるので一筋縄ではいきません。それにもかかわらず、生徒さんは歴史への興味をバネに、しっかりと取り組んでいます。
さて、英語が読めるということは書けるということでもあります。なぜなら、外国語の構造的理解はそれが瞬間的に頭から出てくるようになって初めて成し遂げられるからです。高校2年生のクラスでは、基本的な文法問題や英作文を生徒さんと一緒に解いていきます。ただ正解するのではなく、この箇所は文全体に対してどういう意味を持つかといった問題、一つの単語でも名詞と形容詞で使うときはどう違うかといった問題、を一緒に考えていくことで、自分が触れている単語や文法一つひとつの理解に対して意識的になってもらうことを目標にしています。