浅野です。
Aさんの話の続きです。
まとまった文章中の重要な単語に印をつけて、その部分の意味だけを空白にした日本語訳と対照しながら、その空白部を埋めてもらうという作業をしています。そんなのは辞書を引けば簡単だと思われるかもしれませんが、決してそんな生易しいものではないことを前回も紹介しました。
今回も困ったところを紹介します。
She moved to the United States.
“move”を辞書で引くと、「動かす」「感動させる」…などと出てきます。そして後ろのほうにようやく「引っ越す」が登場します。前から順番に試していくと大変ですね。これは前回の記事にコメントしていただきましたように、自動詞と他動詞を区別すると早いです。”move”の後に目的語ではなく”to”があるので自動詞だと判断できれば、すぐに「引っ越す」という意味にたどり着けるでしょう。
She trained nurses there.
“trained”とは何でしょう?”train”を辞書で引いても「列車」なのでこの文脈にはそぐわないし…と考えると迷います。ここではedがついていますし、他に動詞らしきものがないので、この”trained”は動詞だと強く心に決めてから辞書を引くと迷いません。「訓練する」です。トレーニングのもととなる動詞ですね。
このように、一口で辞書を引くといってもその内実は深いです。辞書を引き始めた最初の頃はどうしても時間がかかり、嫌になりがちですが、慣れるとスムーズに引けるようになるので、経験あるのみです。
>このように、一口で辞書を引くといってもその内実は深いです。辞書を引き始めた最初の頃はどうしても時間がかかり、嫌になりがちですが、慣れるとスムーズに引けるようになるので、経験あるのみです。
まったく同感です。さらっと書いておられますが、英語が好きになるかどうかは、辞書の使い方を習得できるかどうか、という点にかかっていて、その習得は「この”trained”は動詞だと強く心に決めてから辞書を引くと迷いません」といわれるとおり、文法の力をベースに「品詞を予測する力」と表裏一体です。
あとは経験ですが、パレートの法則を無理矢理あてはめると、その経験が苦痛に満ちたものですぐにあきらめる結果につながるのが8割。辞書を引けば引くほど「おお!」とか、「なるほど!」といった喜びに満ちた楽しい結果につながるのが2割、といったところでしょう。
英語の基礎=中学の英語=辞書を引く力
私の日頃の主張によると、高校生でも、大学生でも次の英文でつまづく人が大半だということになります。
He runs a small restaurant.
かりにこの文の run の意味を知らないとしても、「おや?なにか変だ」という感覚があればよいのです。「おかしい」(つまり「走る」では意味が通らない)と気づくことで、辞書にすっと手が伸びるのです。
答えはかきません。気になる人は自分で辞書を調べるようにしてください。面倒なことをやりとげたら、かならず「おおっ!」という感動がまっています。
高校以上になると英文が複雑になり、一見みたことのない英単語の出現率がアップします。でも、本当に英語がわからない理由は、そのような単語を知らないために生じるのではなく、上にあげた run にであい、ピンとくるかどうかで決まってきます。
私は先日授業の合間の時間に浅野先生のプリントを生徒に見せてもらい、とてもすばらしいと直感しました。浅野先生の授業は、この run レベルに生徒の意識を集中させるものであり、短い時間でも英語に対するセンスを養う上で、大事なことを学べるようになっています。