『しぜん』(A・B1・C2)(クラス便り2015年11月)

山びこ通信2015年度秋学期号より下記の記事を転載致します。

『しぜん』(A・B1・C2)

担当 梁川 健哲

sizenC12015-11-17 20.52.14【C1クラス】
 発見と観察が得意な1年生の仲間たち。拾った木の実の中に、素敵な模様を発見したり、森の中で大小色とりどりのキノコを見つけたり。

 ある日のこと。早く教室に着いたA君が家から持って来た「カタツムリ図鑑」を見せながら、興奮気味に語ってくれます。「カタツムリの殻は成長するとね、渦の数が増えていくんだよ。」ホワイトボードに図を書きながら説明するA君。彼は大のカタツムリ好きなのです。「予行練習になったね。後で発表しよう。」と彼に伝えました。

 いつもの発表の時間。「人参あげるとオレンジのうんちするんやで!」「私レタスばっかりあげてたら水色のうんちしたの見たことある!」「カタツムリってチューするんだよ!」「本当?」「『マイマイ』って何?」A君の発表を皮切りに、活発な発言が交わされました。

 最後に私からの発表と称し、この日みんなに提案しようと思っていた「葉っぱ図鑑づくり」について説明しました。数年前にクラスの先輩達が作った「図鑑」の写真を見せると「おぉ〜!」という歓声。「作ってみたい人?」一斉に手を挙げるみんな。

 こうしてこの日は「カタツムリ探し」と「葉っぱ集め」をしようと決まりました。最近カタツムリが殻に閉じこもっているのを見かけるので、剥がしても平気かどうかA君に訊ねてみると、「くっついている葉っぱごと取ればいいと思うよ。」と答えます。「それじゃあ、カタツムリの好きな葉っぱも調べられるかもね!」

 教室を出ると、早速居ました!モミジの幹にくっついた一匹のカタツムリ。「やっぱりこの辺には『クチベニマイマイ』が多いみたいだなぁ。」カタツムリを見てA君。「『葉っぱとカタツムリ図鑑!』が出来るかな?」「また石も集めたいな〜」とFちゃん。「色々な図鑑ができそうだね。」そんな言葉を交わしながら石段をみんなと上がって行きました。一体どんな図鑑に発展していくのでしょうか。

sizenAa 2015-11-17 20.52.38【Aクラス】
 秋学期は「秘密基地」作りが始まっています。以前やりかけて、思いの他続かなかったことを受けて、今回は簡単な「ヒント集」を作って渡してみました。それが功を奏したのか、「やろうやろう!」と張り切り方がいつもと違います。

 まずは場所探し。尾根伝いの道から少しだけ脇に斜面を降りると、木々に囲まれて少しだけ平らになっている手頃な場所がありました。(これだけで半分は完成と言えるでしょう!)

 次に、辺りをよく見回し、「こっちから回って、この木の横が出入り口になるかな…」「ここを結ぶと壁になるかな…」などと言い合って、広さや動線を確かめながら、木々の「柱」で囲まれた地面だけを、熊手を使って慣らしていきます。すると、雑然とした落ち葉や小枝が取り除かれ、見違えるほど「場」が明確に現れてきます。「秘密基地」作りの楽しさに理屈は不要ですが、このように「場を発見すること」に一つの大きな意味があるように思います。また、みんなの動きや表情、胸の高鳴りを感じるにつけ、それはどこか本能に根ざした欲求のようにも見えてきます。
 

sizenAb 2015-11-17 20.53.13 さて、この日は間伐して捨てられていた竹を材料にしようと手分けして運んで来ていました。のこぎりで一節分に切った竹に鉈を打込むと、面白いようにパカンと割れます。割れた竹に腰掛けてみるS君。一節が丁度一人分の腰掛けになると気付き、みんなでベンチを作ってみることになりました。「見て、めっちゃ真っ直ぐ!」割れた竹を見て喜ぶT君。「Aちゃんの分は俺が作るぞ!」と張り切るK君。流れ作業で、瞬く間に竹のベンチが完成しました!背もたれもあります。

 みんなだけの本当に本当の秘密基地。完成したら何をして過ごそうかとワクワクしながら計画は進んでいます。

sizenB1 2015-11-17 20.53.48【B1クラス】
 春学期以来、みんなはすっかりと沢へ行くのが好きになったようで、運動靴のまま流れの中をジャブジャブ歩いたり、前もって長靴を履いてきたりする仲間も出てきました。「私は絶対カエル捕まえたい!」「『砂金』を集めるぞ!」「沢蟹いないかなぁ」「ダムを作りたい!」その時々で様々な思いを抱いて沢へ行き、ひたすら遊びます。

 遊びの中で、脇の斜面のあちこちから水が染み出していることや、場所によって流れの強さが違うこと、色々なことに気づきます。時には動物の骨といった珍しい発見もあります。「顎下骨(がっかこつ)だ!」骨博士のM君が嬉しそうに言います。

 特にみんなに人気があるのは、緩やかで浅い流れの底にある、キラキラと金色に光る砂です。「うわ、ここめっちゃある!」と叫んでしゃがみこんでは大事そうに掬い、時にはビニール袋が破けそうになるくらい集めます。

 みんなはそれを「砂金だ!」「金箔だ!」と呼びます。私は「金箔かなぁ。綺麗だね!」とみんなに応じたり、それらを「沢の中のキラキラ」と呼んだりしています。ここまで読まれた方の中には、その正体が何なのかご存じの方もいることでしょう。私は「正確な知識」と「みんなの認識」とを幾度も天秤にかけて悩みましたが、当面は前者を封印しておくことに決めました。何故なら、前者については(中学の理科などで)遅かれ早かれ気づく時が来るでしょうし、何よりも「みんな自身が自分でそれらの価値を決めている」ことが尊いと思えるからです。事実、透き通る滑らかな水底に木漏れ日を浴びて「金箔」が輝いている光景は、うっとりするような美しさです。見つめる子どもたちの表情も呼応するかのようにキラキラ輝いています。そこに大人が親切心から「正しい答え」を当て嵌めて、このキラキラした時間を早く終わらせることはいとも簡単です。ピンセットで「金箔」だけを沢山集めよう、虫眼鏡で覗いてみようという、みんなの自発的な気持ちに水を差さぬよう、生きた自然の中に見出した美や価値の方を尊重し、今、静かに見守っているところです。