山びこ通信2015年度秋学期号より下記の記事を転載致します。
『中学・高校数学』C
担当 吉川弘晃
このクラスは、中学1年と中学3年生の生徒さんに問題を解いてもらい、それぞれに講師が解説を加えるという、スタイルをとっています。これだけ聞くと、単なる「自習クラス」であるかのような印象を与えてしまうかもしれませんが、1つだけ工夫していることがあります。それは、「計算や論証の過程を紙に書く」という癖を生徒さんにつけてもらうことです。
高校入試問題や模試を見ていると、中学では答えの数字さえ合っていれば合格点はもらえるようです。実際、解答用紙には数字を書かせるだけで、良くて穴埋め型式の論証があるくらいです。確かに、小学算数から中学数学への橋渡しをする中学1年の時点では、数字や記号を正しく用いて計算を間違いなく行うのが第一ですから、授業ではできるだけ多くの「計算」問題を解いてもらうことにとどめ、「論証」の部分はあまり細かく指導しません。但し、計算ミスを防ぐために、計算過程をしっかり紙に残すことを生徒さんに徹底させ、もし間違えた場合は、どの時点でミスをしたのかを認識してもらうことにしています。
これが、中学3年になると、計算過程が複雑になるだけでなく、図形と数式を組み合わせて考えるために「論証」の要素が重要になってきます。ここで第一に重要なのが、数学で使われる言葉の意味を正しく理解することです。例えば、この学年の最も重要な学習項目として、「方程式と関数」が登場しますが、この2つがどう異なるのかを正しく友達に説明できるかということです。次に重要なのが、問題文に登場する文字や記号の意味を考えることです。例えば、問題文で出てきた文字は何を意味するのか、関数はグラフに表せばどういう形になってそれは何を意味するのか、さらには自分で式を立てるときに問題文と同じ文字を使うべきか、違う文字を使うべきか。これら1つひとつをしっかり考える、そのために式やグラフを紙にしっかりと書き残す、以上の習慣を身につけることで、論証過程のミスを防げるだけでなく、高校数学で必要とされる論証の記述の初歩も学ぶことが出来ます。