福西です。
「かるた大会をしたい!」と生徒が言っているので、それに向けて百人一首のおさらいをしました。
いつもなら私の方で1首ずつ選んで、それを暗唱してもらうのですが、今回はかるたの箱の中から、自分たちで好きな札を見つけてもらいました。そして、それを前に出て来て詠んでもらいました。
後半は、本を読もうかとも思ったのですが、この日は晴れ間の広がる気持ちのいい日でした。それなので、最近は雨続きだったこともあり、せっかくなので外へ出ました。そして、秋を探しに山の奥へ行きました。
建物の壁につかまったまま動かないカマキリや、黄色っぽい日差しや、赤い実が、秋を感じさせていました。
萩の花が咲いていたので、立ち止まって、「これが萩だよ」と教えました。「秋の草」と書いて「萩」。万葉集によく歌われている花です。それが咲いていることに敏感になったのは、私もここ最近になってからです。それまでは眼中にありませんでしたが、いつの間にかそれを懐かしいと思うようになってきました。小学生たちも、今はそれほどフシギに感じることもない様子でした。そういうわけで、しみじみと指差して見ていました。
どんぐりの落ちているあたりで、E君が「ぼくの好きな木がある」と言って、上を見上げました。E君にとって、その木は、「カブトムシが取れるから」、好きなのだそうです。
木々の間を道なりに行くと、どんぐりのたくさん落ちている場所がありました。
「ああ、どんぐりが逃げちゃう!」
とは、A君でした。A君のポケットには、すでにどんぐりがいっぱい詰め込まれていました。それがもう入らなくなって、何度やってもこぼれ落ちた時の、とっさの一言でした。
せっかくなので、沢まで降りました。水辺はカニやカエルがいて、まだ夏の名残が感じられました。
「秋にもね カニさがしには 快適だ」
「赤がえる 秋にもいるよ まだいるいよ」
とは、Hちゃんが即興で作った俳句。2句目は、青ガエルではないことに興味が引かれたようです。
みんなでカニを探したり、M君が以前「しぜん」のクラスで作ったダムを修復したりして、まったりと過ごしてから、帰ってきました。
秋の日はつるべ落とし。次の「かず」のクラスが始まる頃には、あたりはすっかり薄暗くなっていました。
P.S.
以下の歌は、この日、生徒たちが自分で好きだと言って選んでくれたものです。
M君
秋の田のかりほの庵のとまをあらみ わが衣手は露にぬれつつ
是れやこの 行くもかへるも別れては 知るもしらぬも逢坂の関
A君
天の原ふりさけみれば春日なる 三笠の山に 出でし月かも *
Hちゃん
風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける
いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重に匂ひぬるかな
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声きくときぞ秋はかなしき *
夜をこめて鳥の空音ははかるとも 世に逢坂の関はゆるさじ
E君
久方の光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ
花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに *
淋しさに宿を立ち出でてながむれば いづこも同じ秋のゆふぐれ
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声きくときぞ秋はかなしき *
天の原ふりさけみれば春日なる 三笠の山に 出でし月かも *
千早振る神代もきかず龍田川 から紅に水くくるとは
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいづこに月やどるらむ *
Sちゃん
大江山いく野の道の遠ければ まだ文も見ず天のはし立
みかの原わきてながるるいづみ川 いつみきとてか恋しかるらむ
此の度はぬさも取りあへず手向山 紅葉のにしき神のまにまに
人はいさ心もしらずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける
百敷や古き軒端のしのぶにも 猶あまりある昔なりけり
田子の浦にうち出でて見れば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ
かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじなもゆるおもひを
名にしおはば逢坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもがな
花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに *
春すぎて夏きにけらし白妙の 衣干すてふ天のかぐ山
契りきなかたみに袖をしぼりつつ すゑの松山波こさじとは
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいづこに月やどるらむ *
君がためはるの野に出でて若菜つむ わが衣手にゆきはふりつつ
ほととぎすなきつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる
上の歌は、「かるた大会」の時に、必ず詠むようにします。また連休中にお家でおさらいをしておいてくれると嬉しいです。
楽しそうですね。私もその場にいるような気持ちになりました。