『ドイツ語初級』(クラス便り2015年6月)

「山びこ通信(2015年度春学期号)」より、下記の記事を転載致します。

『ドイツ語初級』

担当 吉川 弘晃

 

 今年からめでたくドイツ語のクラスが開講となりました。ドイツ語というと、名詞の性が3つあったり、格変化(名詞の文中での役割によって単語や冠詞の語尾が変化すること)があったり、主語が必ずしも最初に位置しなかったりと、英語やフランス語に比べて難しいという印象を抱かれがちです。
さて、突然ですが次の独文と日本語訳を見てみましょう。 

 Das ist ein von diesem Standpunkt aus zu betrachtendes Problem.
 これは/(ある)/この/観点/から/考察されるべき/問題/である。

 これは、教科書を一通りやれば読める文章です。下の訳は上のドイツ語文の単語をほぼ語順通りに逐語訳しただけです。「問題」という名詞に前から次々に修飾語句をつけていけるのは日本語話者からすれば、ドイツ語文法に親しみを感じられる点です。英語やフランス語だと、「この観点から考察されるべき」という部分は、名詞の後に分詞や関係詞の形式でつけるしかありません(ちなみにドイツ語でも、名詞の後に関係詞をつけられます)。
 ここから分かるのは、ドイツ語は同じ内容でも様々な語順で表現できるという点で、「自由」な文法を有し、書いても読んでも話しても聞いても、楽しい言葉であるということです(ドイツ人は早口なので聞き取るのは私も苦労しますが…)。
 授業では、大学で使う薄い文法教科書を1回に2課の進度で学習しています。この教科書は1年で終わらせることを想定に作られているので、生徒さんにとって予習・復習が大変になることは必至です。しかし、それでも1学期内で文法を終わらせんとするのは、ドイツ語という言葉の大まかな輪郭を生徒さんに早く掴んでもらいたいからです。どの言語であれ、インプットとアウトプットの繰り返しを数年間繰り返さなければ、文法事項は身に入りません。それならば、多少、切り残した木があっても、まずは森を一周するほうがモチベーションをもって学習が続けられるというものです。
 関東地方やミッション系の一部の高校では、第二外国語としてドイツ語やフランス語を学ぶところもあります。英語もままならないうちに、ドイツ語を始めたら頭が混乱するのではないかという声も挙がるでしょうが、むしろ多様な言葉の枠組みを知ることで、英語という言葉を違った角度から眺めることが出来るので、ドイツ語の学習は英語力の上達につながります。我こそはと思う方は、いつでもお気軽にドイツ語の森に遊びに来てください。