中学高校数学B(0507)

福西です。

この日は中学1年生のY君とマンツーマンで、プラス、マイナスの足し算・引き算をしました。

足し算と引き算の組み合わせとしては、以下の4通りがあります。

(1) +(-A)

(2) -(+A)

(3) +(+A)

(4) -(-A)

ここで、Aは0以上の数と定義しておきます。イメージは、「もらうと嬉しいもの」です。

 

さて、上の計算処理で「?」となってしまうとしたら、それは、次の事が原因です。

ズバリ、「かっこがあること」

です。

かっこの処理が面倒という一面も大きいですが、それよりもっと根本的な問題は、次の点です。

「かっこを仲立ちとして、-1×-1のようなマイナスのかけ算が隠れていること。そしてその『マイナスのかけ算』についてはまだ習っていないこと」

です。

習っていないことを暗にしようとしているわけですから、そこで混乱する生徒が出てきても、実はおかしくないわけです。

なので、ここでは、どうやってその「かけ算」という言葉を使わずに、(4)を翻訳するかということが課題になります。

 

私は、授業では、イメージ路線でいきました。

 

(1)と(2)は、見ての通り、同じ答になります。

(1) +(-A)=「悲しみ が 増える」 → と、「悲しい」 →だから、-A。

(2) -(+A)=「嬉しさ が 減る」 → と、「悲しい」 →だから、-A。

 

結果、「-」は、( )の前後にある「+」の存在を無視してもよいことが分かります。

(私の中にあるイメージとしては、「-」は、「+」の壁を「すり抜ける」)

 

(3)と(4)も実は同じ答になります。

(3) +(+A)=「嬉しさ が 増える」 → と、「嬉しい」 →だから、+A。

(4) -(-A)=「悲しみ が 減る」 →  と、「嬉しい」 →だから、+A。

 

躓きの石となるのは、やっぱり(4)ですが、「悲しみの方向を逆にする」「悲しみをはね返す」ようなイメージができあがれば、「頭」での理解に加えて、「感情」も納得できると思います。(授業では割とラディカルに「借金チャラ」とか、「ツケでした買い物の借用証書を破る」といった比喩を用いていました。その方が分かりやすいので)。

 

ここでの注意は、誰にとっての得かということで、あまり頑張りすぎて、「相対的な話」を持ち込まないことです。

「マイナスの数にとってのプラスはマイナスが減るから損である」とか、そういう風に考えると、逆にややこしくなります。

あくまで一方的な基準から(正に立場を固定して)考える方が、ここでは楽です。

Aを「0以上」の数にしたのは、そのためです。

数直線で言えば常に右方向が「正」で、「正」の立場から考えることです。

 

以下、「のび太基準」でイメージを焼き直してみました。

 

(1) +(-A) 悲しみが増える = スネ夫 (に借用証書(-A)を書かされる)

(2) -(+A)  嬉しさが減る = ジャイアン (に漫画(+A)を取られる)

(3) +(+A) 嬉しさが増える = しずかちゃん (にケーキ(+A)をもらう)

(4) -(-A) 悲しみが減る = ドラえもん (に秘密道具で借用証書(-A)をチャラにしてもらう)

 

(1)と(2)は、悲しい体験。

(3)と(4)は、嬉しい体験。

 

その結果、次のような法則が得られます。

 

かっこの中と外が、

異符号であれば「-」

同符号であれば「+」。

 

ただし、ここまで一度に圧縮してしまうのは、ちょっと欲張りかもしれません。

もしこの法則が、頭では理解してもまだ感情が納得しないようであれば、別に無理する必要はありません。

素朴にさっきの上のジャイアン・スネ夫のイメージで、その都度考えればいいと思います。

 

【練習問題1】

(1) (+3)+(-5)=(スネ夫)=3-5=-2

(2) (+1)-(+7)=(ジャイアン)=1-7=-6

(3) (+1)+(+1)=(しずかちゃん)=1+1=2

(4) (+4)-(-7)=(ドラえもん)=4+7=11

 

左の第一項がマイナスの場合でも、話は同じですが、ちょっとイメージが必要です。

-3-5

の計算で、3と5を見た瞬間、

5-3

をして、

-2と間違える可能性があるからです。

 

マイナスにマイナスを重ねる、つまり「悲しみ」のあとにまた「悲しみ」がやって来る

というイメージで、

-3-5=-8

とします。

 

【練習問題2】

(1) (-3)+(-5)=-3-5=(悲しいこと続き)=-8

(2) (-1)-(+7)=-1-7=(悲しいこと続き)=-8

(3) (-1)+(+1)=-1+1=(悲しみと嬉しさが同じなので)=0

(4) (-4)-(-7)=-4+7=(悲しみより嬉しさが勝っているので)=3

 

 

【補足】

実際の計算では、以下のように、なるべく早い時期から、( )を付けるのを(4)の場合だけにすることに慣れた方がいいと思います。

 

学校

(1) (+3)+(-5)

(2) (+3)-(+5)

(3) (+3)+(+5)

(4) (+3)-(-5)

 

実際

(1) 3-5

(2) 3-5

(3) 3+5

(4) 3-(-5)

 

(1)と(2)は、( )を使ってくどく説明しない方が、小学校からの自然な流れで、かえって分かりやすく思います。(注参照)

(3)は小学生の時の計算そのままです。

よって、(4)にのみ、( )をつけています。

 

私の考えですが、上のような場合では、( )は負の数を意識させるためではなくて、「この時だけは符号が反転するので注意せよ」という意味にとどめるのが実際的です。その方が混乱が少ないと思います。

 

(注)

ただし、(1)と(2)では、演算結果に要請される「負の数」というものが、「すでに存在している」ものとして考えています。

「ほら、天気予報でも、-2℃って見たことある? 0℃から2℃下がってたら、-2℃。ただそれだけ。温度計でも見たことがある通り、0-2=-2、ほら簡単!」(同じく3℃から5℃下がれば3-5=-2で、何も難しくない!)

このように、負の数を単に「0からの不足を数えている」ものとして扱い、さらっと「小学生でした計算の延長である」と言い切った方が、学習時間を半月分ぐらいは節約できるように思います。(わざわざ、3-5=-(5-3)と書き直すことを練習するのではなくて…)

そして、計算の結果が「-」であることの納得については、温度計をより抽象化した、数直線を使って、

「目で見てわかる」

方がいいでしょう。

 

Y君が、

「数直線って、けっこう大事なんやな」

といみじくも言っていました。

 

ただし、授業では、学校のやり方と違う教え方を強調しすぎしても、かえってダブルスタンダードと言うか、中学生に混乱を与えてしまってもいけないので、そこは注意しています。極力その生徒に合った比喩で、学校のやり方に沿うようにフォローした上で、折に触れて、「そこは根を詰める必要はないよ」というメリハリの情報を伝えたいと考えています。(メリハリが見えれば、他に頑張れる部分も出てくるので)。