福西です。先週は論理パズルでした。
問題(再掲)
「アイアス、オデュッセウス、ディオメデスの三人が、武器屋で上等な買い物をしました。鎧は金貨6枚、盾は金貨4枚、槍は金貨2枚です(槍は投げて使うので比較的安価なのです)。さて3人とも品を2つずつ買いました。以下の条件で、だれが何を買ったかを証明しなさい。また答は一意(一通り)かどうかも示しなさい」
条件1
1人が同じ種類の物を2つ買うことはできません(鎧2つなどを買った者はいません)。
条件2
お互いに、2つの品が2つとも同じになるように買った者はいません。(アイアスが盾と槍で、オデュッセウスも盾と槍ということはありません。ただしアイアスが盾と槍で、オデュッセウスが鎧と槍ということはあります)
条件3
槍を買った者は必ずうそをつき、槍を買っていない者は必ず正しい発言をします。ただしうそとは、正しいことと反対のことを指します。そして二人が次のように発言しています。
アイアス:「オデュッセウスは金貨8枚を使ったぞ」
オデュッセウス:「ディオメデスは金貨10枚を使ったぞ」
さて、だれが何を買ったでしょうか?
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前提となること
鎧、盾、槍のうち、種類の違う2つを選ぶ選び方は、以下の3パターン。
鎧と盾=正直者=金貨10まい
鎧と槍=うそつき=金貨8まい
盾と槍=うそつき=金貨6まい
すなわち、金貨10まいの者だけが正直者で、金貨8まいと6まい(10まい以外)はうそつきである。
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T君 「アイアスは正直者かうそつきか」で場合分けするやり方
<ア>=アイアス <オ>=オデュッセウス <デ>=ディオメデス
<よ>=鎧 <た>=盾 <や>=槍
1)
<ア> が本当(正直者)だった場合=10まい(金貨)
(金貨10まい使った<ア>は)<た>と<よ>を買う。そして<ア>は「オデュッセウスは金貨8まい使った」と言っていて、(<ア>は仮定より)正直者だからうそではないので、<オ>は金貨8まい使ったことになり、8まいは<よ>と<や>を買う。<や>を買った者はうそつきになるから、<オ>はうそつきになる。
そして<オ>は「<デ>は金貨10まいつかったぞ」と言っているけど、<オ>はうそつきなので、<デ>は6まいになる。(これは矛盾しない)
(つまり答は、<ア>=<た>と<よ>、<オ>=<よ>と<や>、<デ>=<た>と<や>)
2)
<ア> がうそつきだった場合
(<オ>は「<デ>が金貨10まい使ったぞ」と言っているので、もし<オ>が正直者(金貨10まい)だったら、<デ>も金貨10まいとなり、正直者は1人しかいないことと矛盾する。したがって<オ>はうそつきでなければならない。)
<ア>は<た>と<や>か、<よ>と<や>を買う。そして<ア>は「<オ>は金貨8まい使ったぞ」と言っているけど、<ア>は(仮定より)うそつきなので、<オ>は8まいではなくなる。(そして<オ>はうそつきだから、<オ>が6まいになる。)そして<ア>が(うそつきなので)8まいになる(<よ>と<や>に確定する)。
そして<オ>もうそつきになるけど、<オ>が「<デ>は金貨10まい使ったぞ」と言っているけど<オ>はうそつきなので、<デ>は10まいではなくなる(<デ>もうそつきになる)。すると3人ともうそつきになるので、(正直者が1人いることと)矛盾する。
(これで全部の場合を言い尽くしたことになり、1)の答が一意である)
補題
3種類のものを2つずつ重複なしに選ぶ時、そのパターンは3パターンしかない!
U君 「オデュッセウスが正直か否か」から導くやり方
1ターン目
もしオデュッセウス(<オ>)が正直だったとしよう。すると(<オ>は)ディオメデス(<デ>)は10まいの金貨だと言っている。10まいなので<デ>は鎧と盾しかない。そのほかに(アイアス(<ア>)と<オ>は)盾と槍、鎧と槍になる。
でも<オ>が正直なら、(<オ>も)<デ>と同じ鎧と盾だ。でも条件2で2つとも同じものを買わないと言っている。つまり<オ>は盾と槍、鎧と槍になる。(よって矛盾。つまり、<オ>はうそつきである。)
2ターン目
<オ>は<デ>が金貨10まい使うと言っている。つまり(1ターン目の結果から<オ>はうそつきなので)<デ>は鎧と盾ではないと言っているのだ。つまり<デ>は槍を買ったということになる。
<オ>も<デ>も10まい買っていないということは残ったアイアス(<ア>)が鎧と盾を買ったということだ。つまり<ア>は正直なので(<ア>の発言から)<オ>は8まい。つまり鎧と槍を買っている。
つまり(条件2の通り)かぶらないためには<デ>は6まい。つまり盾と槍を買っているということだ。
答え
つまりアイアスは鎧と盾。オデュッセウスは鎧と槍。ディオメデスは盾と槍になり、答えは(そのほかの可能性はないので)一意!
*( )は私が補足した部分です。後は生徒の解答そのままです。
今では、「矛盾」という言葉を合言葉に、それを生徒たちが自分で使えるようになっていることが嬉しいです。T君は「論理パズルはな、矛盾を導ければ勝ちなんや!」と言っていました。そのような、生徒たちの成長に目を瞠るこの頃です。
山下です。
感動しました!すばらしい取り組みです。考える力、表現する力、すべての力を総動員し、それぞれが自分の解き方で、しっかり解答を導いています。
サイコロをふるような、○×式問題の対極にありますね。
勉強の楽しさはこのような問題に取り組み、解ききる経験を重ねることによって得られますね。
場合分けしながら矛盾しない考えを選び取るという意味では、英語の学びにも通じます。辞書を引くとき、意味が3つ載っているとします。文脈の解釈に照らし、未知の単語の意味としてどの訳語を選択したら、意味が通るのか?
ここに忍耐力が問われますが、本当は忍耐ではなく論理の力が問われるのですね。また、その力をどれだけ養ってきたかが。
生徒たちは大きな達成感を味わったことでしょう。