山の学校ゼミ『数学』 (クラス便り2015年2月)

「山びこ通信(2014年度冬学期号)」より、下記の記事を転載致します。

山の学校ゼミ『数学』          担当 福西亮馬

 このクラスでは、昨年度の春学期から『虚数の情緒』(吉田武著、東海大学出版会)を読んでいます。この原稿を書いている頃には、1,000ページ中の600ページを超え、第二部の最後まで読み終えました。これで内容的には三分の二にたどり着いたことになります。
 冬学期の内容は、虚数iをei(eはネイピア数)へと、またxからex からeixへと順次パワーアップさせ、ついにオイラーの公式eix=cos(x)+i sin(x) へと進化させる、というのがあらすじでした。
虚数iは、前学期から引き続き主役です。今学期は、重要な脇役としてネイピア数eが登場しました。iを「肩に乗せている」土台です。そのネイピア数を、テキストの方法(電卓計算)に沿って、指数関数y=10xやy=2xの中から発見しました。そこで使った強力な概念ツールが、「線形近似」でした。線形近似とは、幾何学的には、曲がったものをまっすぐなもので、数式で言うと、一次関数で表すことです。たとえば、ex≒1+xです。この一見無理矢理な話は、あとで「微分」という概念につながります。
 また、eixは、ただの複素数になります。つまり複素平面(2次元平面)上の「点」に当たります。そしてこの「点」が持つ幾何学と三角関数との対応関係、また三角関数の周期性と虚数倍(×i)の周期性とを見比べることにより、念願のオイラーの公式へとたどり着きました。
テキストの最終章は、ここで得たオイラーの公式が、物理的な世界(力学)でどのように活躍しているのか、その檜舞台を鑑賞する内容となっています。その時にeixはeiωtと少し改名し、ωは周波数、tは時間という具体的な意味合いを持つようになります。「振動あるところにeiωtあり」というのが、第三部の予告です。
ところで、指数や三角関数は、高校数学のおさらいになりますが、一方のテキストでは電卓計算という異なるアプローチで見てきました。そこで素に戻って、受講生のMさんの提案で、高校の教科書を当時の懐かしさとともに開いてみました。すると、加法定理にしても、「こんなことが書いてあったのか」と、かえって腑に落ちるところがありました。(当時は私も無味乾燥にしか思えずに、読み飛ばしていました)。こういう「時間差」の理解というものも、大人になった今だから味わえる、妙味の一つなのかもしれません。