福西です。
「ことば1~2年A」クラスのRちゃん(2年生)からも、俳句帳を預かったので、ここに紹介いたします。
春学期
1 「さ」 さんかくやねの サーカスごや
2 「し」 しかにのった しずかちゃん
3 「シ」 シートの上で おべんとう おいしいな
4 「す」 すみれが きれいな はる
5 「す」 すいすで すいかを 一こたべた
6 「せ」 せかいの みんなが まっている サンタクロース
7 「そ」 そとはさむいな ブルブルブル
8 さいている むらさき色の にちにちそう
9 まわるちきゅう 目がまわるなあ ああたのしい
10 みちくんが なやんでいるよ 字のことで
11 ささっと おわらせよう しゅくだい
12 うんていは いっぱいやると 手がいたい
13 すべりだい すべるとこわい 早いから
14 きれいだな あおい色の あじさいは
15 すみれがね きれいにさいて いる春だね
16 つゆの日に ながぐつあそぶ みずたまり
17 ブランコは 高くあがる すずしいな
18 とけいがね 3じになった はらへった
19 がっこうで れんしゅうしてる 一りん車を
20 たいくがすき 8だんとべる たてにがて
秋学期
21 がっこうの きゅうしょくいつも のこさない
22 わたしはね 本が大すき おもしろい
23 休みじかん いつもとしょしつ 本よむの
24 今日の朝 むらさきしきぶ 見つけたよ
25 かえりみち さいごのさかみち かけのぼる
26 ランドセル せおうとかるい ちゃいろなの
27 マスゲーム うえははじめて ちょっとこわい
28 あきにはね いろんなぎょうじ がんばろう
29 あきのはっぱ いろとりどりだ おもしろい
30 うんどうかい 2いだあったから くやしいな
31 ふでばこに えんぴつはちほん ぱんぱんだ
冬学期
32 がっこうの きゅうしょくおいしい のこさない (21番のバリエーション)
33 モグラのね あなをほっても あえないの
34 すぐすぎる たいせつにしよう じかんはね
35 ふゆはね さむいけれども 火のようじん
36 クリスマス 子どもがたのしみ プレゼント
37 クッキーは はにはさまるな どうとろう
38 ふゆの朝 ふとんの中から でたくない
39 いちにちは ながくてみぢかい なぜだろう
40 しいるちょう いろんなかたち いっぱいだ
41 花のかおり いろんなにおい まじってる
42 えいごはね いろんなはつおん むづかしい
43 はるの朝 ゆきもとける いいながめ
44 秋のはっぱ みどりきいろに 赤もある
45 お手紙は もらうとうれしい へんじかこ
46 ひびいてる いろんながっきの ちがうおと
47 おせんたく ひかりとかぜで ピンピンだ
48 ながずぼん 冬のふくそう ながそでも
49 おばけくん いるかしらない みてみたい
50 すきな人 わすれられない あいしてる
51 かん字はね きれいにかかなきゃ 丸もらえない
52 たいいくは ちからをつかう がんばろう
53 しゅくだいは じかんがかかる いやだなあ
54 らんりゅっく せおうとかるい なぜだろう
55 いもうとは いつも元気で たのしそう
56 花びらで うんめいきめる こっそりと
57 ふゆの朝 ねたいけれども おきないと
58 がっこうの いきしはねむい さむいのも
59 しゅくだいは いっぱい出るな やりたくない
60 雨の日は かさをさすから 歩きにくい
61 せきがえは だれのとなりか ドキドキだ
62 電車には なぜしんごうが ないのかな
63 うんどう会 かつかまけるか がんばった
64 空のくも いろんな形 すぐかわる
65 え本には いろんな言ば おぼえよう
66 ふゆのとき てつぼうやると てがひえる
67 ひゃく人一首 おぼえてしまって かっちゃおう
68 行き帰り ぎんなんふまず いかないと
69 ころんでも 雪があるから いたくない
70 雪がふる 足がはまって うごけない
(2015年1月現在)
今あらためてその句の全体を振り返ってみると、句の初めに戻れば戻るほど、時間の作用というものが、少しずつ、けれども確実に働いていることが感じられます。
最初の「さしすせそ」の作品は、俳句を作り出す前の頃のものです。また、「みちくんが なやんでいるよ 字のことで」(10番)というのは、M君と隣り合ってクラスにいた頃の俳句です。確かに、M君はその時も、その後の今でも、「字のことで」(たとえば「え」と「ゑ」などで)推敲しています。そうしたM君らしさを素描し得たところに、Rちゃんも得意になっているようです。
Rちゃんの俳句の題材は、主に生活の中心である学校のことが多いのですが、時に、俳句にしたいものが思いつかず、表面的には同じ調子で綴っているように思えることがあります。けれども、そういう作品ほど、その「こころ」には、いろいろと悩み多き年頃を過ごしているのだということを察します。
いもうとは いつも元気で たのしそう (55番)
などは、「無邪気さ」への回帰を偲ばせながらも、「少し前の自分」に対する羨望と、妹を「庇護する」優しさとがうかがわれます。そして自分にも自分なりの「元気の源」があることを、Rちゃんはこの句で無意識ながら確認しているように思えました。
Rちゃんは本を読むのが好きです(本人いわく、国語≠「図書が好き」)。そのことが俳句にもしばしばあらわれています。山の学校の休み時間でも、ルビがない本に挑戦していることも多いです。私もたいてい本は好きな方ですが、Rちゃんほど熱心ではありません。読書家なRちゃんの様子は、見るにつけて尊敬します。そうかと思うと、山の学校で最初に見つけた『耳をすませば』(ジブリの本)を、何回も見返していることもあります。これはこれで、とてもRちゃんらしいことだと思います。(おそらくRちゃんの心の琴線に触れるのだと思います)。
今日の朝 むらさきしきぶ 見つけたよ (24番)
この花の名前は、朝、学校に出かける前に、お母さんに教えてもらったそうです。「むらさき」つながりで、「さいている むらさき色の にちにちそう(8番)」とも対になっているのかもしれません。花や色彩に敏なところがRちゃんにはあります。
花のかおり いろんなにおい まじってる (41番)
そう言えば、お家で百人一首をして、小野小町の歌をお母さんに教えてもらったと言っていました。この句の音に、そのことが見てとれます。
ランドセル せおうとかるい ちゃいろなの (26番)
一方こちらの句では、Rちゃんの声がそのまま聞こえてきます。
花びらで うんめいきめる こっそりと (56番)
すきな人 わすれられない あいしてる (50番)
これは、はにかんだRちゃんの声です。後者の俳句は、ハートマークの切り紙に書かれていました。『耳をすませば』を見て(?)かなと思いました。
おせんたく ひかりとかぜで ピンピンだ (47番)
「ひかりとかぜ」というのが、Rちゃんの言葉として出てきたことに、驚きを感じます。(私は中島敦の作品を連想しました)。
ひびいてる いろんながっきの ちがうおと (46番)
「ひびいてる」という語感も、先の「ひかりとかぜ」のように、Rちゃんの中を通しての表現であることにその意味があります。そう言えばRちゃんはチェロを習っているとも聞きました。
えいごはね いろんなはつおん むづかしい (42番)
こうした、その時その時の、勉学の悩みも伺われます。
かえりみち さいごのさかみち かけのぼる (25番)
「かえりみち」というのは、家の玄関前のことだそうですが、いろいろとがんばる出来事を経た後の、ほっとする瞬間、その心を読んでいるところが、素晴らしいです。
時間は、学校の帰りであればまだ明るい頃でしょうし、山の学校の帰りであれば、きっと電燈がついている頃でしょう。この句は、何度読み返しても味のある、いい句です。どうかこの先、何度でもこの俳句の示す「あの場所」(あるいは「この道」)に帰ってきてください。
このように少しずつでもいいので、その時その時の気持ちを、「今できること」として、文章に起こして欲しいと思います。
もちろん、難しいことではあります。
考えて書こうとすればするほど、それは難しくなるでしょう。
けれども、書いたものであれば、残ります。
いつ、どこへ行っても。
それが、書くということのメリットです。
ただし、実際には、書いた内容そのものではなくて、書いた時の気持ちの方が、一番覚えていることになるだろうと思います。
それが、むしろねらいです。
書いた時の「気持ちが残る」ために。
時に、時間を忘れて本を読むように、
「(時間を)忘れたこと」を、書き残して欲しいと思います。