福西です。2/15の記録です。
先週(2/8)、『輪』についてのレポートをまとめてもらったので、この日からはまた新しい問題です(レポートの方はおいおいタイプしてご紹介します^^)。
『ハノイの塔』という問題です。これは、彼らが2年生ぐらいの時から、「6年生になったらしよう!」と思って、腹中に温めていたものでした。本当は名前は伏せていたのですが、「これってハノイの塔?」とU君がすでに知っていました(^^)というわけで、実際にやってみました。
(ハノイの塔で実験中)
板(小) → 板(小)
板(中) → 板(中)
板(大) → 板(大)
—– —– —– → —– —– —–
台A 台B 台C → 台A 台B 台C
*実際の実験では、板の大きさを、数字の大小に置き換えています。
さて、手を動かして実験してみると、3枚の時は7回、4枚では15回。5枚では急に複雑になって、試行錯誤をしながら31回であることまで突き止めました。
普通ならこのあたりで飽きてしまうものですが、すかさず「次、6枚もやってみよう!」と、K君の鶴の一声。
6枚では、最初の試行で100回を超えていましたが、次第に手順を減らして、65回、62回となりました。ここで「偶数はおかしいのと違うかな?」とU君の発言。
そこで何度も調べ直した結果、63回が正しい結果だと分かりました。
この間、非常に便利なことに気付きました。それは、板の状態とそれまでにかかった手順を覚えておけば、もし数え間違えても、一から数えなおさなくてもよいということでした。ゲームで言う「セーブ」です(笑)。このことが後の実験をより単純確実なものにしました。
さらに、もっとも単純な「板が1枚の時」と「2枚の時」も補完したところ、次のような数字の並びが見えてきました。
板の数 1 2 3 4 5 6
手順 1 3 7 15 31 63
ここでU君が、数の増え方に規則性があることに気付きました。「差が2、4、8、16、32になってる」と。そして、「次は64増えるのでは?」という予想を立てました。「やってみよう」とK君も協力を申し出ます。
K君は板を動かすコツを、得意のルービックキューブのように早いうちに掴んでいたので、彼の手順は確実でした。そして板が7枚の時は、127回であることが確かめました。こうなると次は128回増えて、255回のはずだと予想できます。
ハノイの塔(7枚までの結果)
板の数 1 2 3 4 5 6 7
手数 1 3 7 15 31 63 127
ここで、手数の解釈として、U君は「+2、+4、+8、+16、+32、+64…」と差分をとり、一方K君はというと、「前の数の2倍に1足したものになっている」と考えました。どちらも鋭いです。
さて今度はその増え方の「意味」の方に問題意識がうつります。
まずK君がひらめきました。K君は法則性を「理解」しようと、さっきの7枚の場合を、もう一度繰り返していました。すると1~6枚までをそっくり動かしたところでちょうど63回。「?」と思ったようです。これは先の6枚の時と同じ手数です。そしてさらに、7の板を動かした後(+1手)、その上に1~6の板を積み重ねるわけですが…
「あ、もしかして、この後も、63回かかるんとちがう?」とK君。「どうして?」「だって、ここからも『6枚を(7枚目の板の上に)動かす』わけだから、さっきまでと同じ手順」「なるほど」「よし、もう一回やろう!」とさらに確かめます。
すると…
「あ! □×2+1は、□+1+□や!」とK君が叫ぶと、「な~るほど、そういうことだったのか!」とU君も納得。「この+1は、一番大きい板を動かすために必要な1手のことをあらわしていたんや!」と何度もうなずいていました。
最初 途中 その次 最後
A 1234567 7
B 123456 123456
C 7 1234567
手数 0 +63 +1 +63
ハノイの塔の考え方(K君主導)
手数は、□+1+□で計算できる。
ただし、□は「一つ前のハノイの塔にかかる手数」のこと。
例 1枚 3
2枚 7=3+1+3
3枚 15=7+1+7
4枚 31=15+1+15
ここまで分かった時、問題を出しました。
20枚なら、何手かかるか?
もはや数えなくても、計算できるはずです。
そこでホワイトボードに20枚までの表を書いてもらいました。K君に偶数、U君に奇数です。
(関数電卓で計算中)
(二人で1個飛ばしに答を書いていきます)
ところが問題が一つ発生しました。というのは、奇数と偶数に手分けして書いたため、「□+1+□」という式が1個ずれていたのでした。U君は1個飛ばしを考慮して「□×4+1」と計算していたのでしたが、実は(□+1+□)×2+1=□×4+3(中学生レベルの計算)となるはずなのでした。むむ、おしい!
「あれ? おかしいぞ、答が…」「なんかぼくのとずれてるな…何で?」
そこで、U君がえらいのは、再び熟考したことです。そしてここから、新しいことを発見しました。
U君は最初、手数の増え方が「2、4、8、16、32、64…」と増えることを発見しましたが、その意味はまだ分かりませんでした。けれどももう一度見直してみた時、ピンと来たのでした。
「もしかしてこれって、2×2×2×…ってこと?」と。その通りです! U君はいつかお母さんにべき乗のことを教わっていて、それを思い出したのでした。
「ってことは…手順の1、3、7、15、31、63、127…は、『□+1+□』でもあらわせるけど、『2×2×2×…-1』でもあわらせるってこと?……うん! やっぱりそうなる!」とU君の熱心な説明に、K君もうなずきます。
というわけで、任意の板の数について、それにかかる手順を計算できる「式」を手に入れたのでした。
ハノイの塔の考え方(U君主導)
n枚の板のハノイの塔の手数は、2×2×…(これをn回)-1で計算できる。
一つのことを同時に二つの式であらわせたことは、大きな結果です。
「一つ前の手順の回数がわかっている時は、『□+1+□』の式の方が使いやすいけど、『2×2×2×…-1』の式は、いつでも使えるのが便利や」とU君は誇らしげです。
(ちなみに、2×2×…と電卓でたたくのは大変そうだったので、そこで関数電卓で魔法を一つ教えました。「^nというボタンを押したら、2^nが計算できるよ」と。すると、「おお! 一発で答が…!」と感動してくれました(笑))
(完成。なんと20枚では、1048475回(100万回以上!)もかかると分かって、ビックリ)
実はハノイの塔は、高校数学の『数列』や『漸化式』を習う時に出てきます。それをまだ知らない彼らは、けれども一から積み重ねて考えることで、同じことに到達したのでした。いわゆる一から何でも作るという「無人島体験」でした。
こうした必然を積み重ねて予想外の結果を得られることは、年齢によって差別されることのない、数学のよさだと思います。
学校ではスマートな解法を教えてもらえるので、それを期待しがちです。このクラスでは、自分の手でそれを発見しようともがいているところがすばらしい。もっと言えば、それを一人でもがくのではなく、友と力を合わせて手に入れようと汗をかいています。冒険ですね。