福西です。この日は、辞書を使いながら、しりとりをして遊びました。
その後、『安寿とずし王』(脚本:堀尾青史、画:久米宏一、童心社)の紙芝居を読みました。
紙芝居は「上」「下」とあって、今回は上までです。
この紙芝居は、森鴎外の『山椒大夫』が原作です。またその『山椒大夫』にも、説経節の『さんせう太夫』という原作があるそうです。生徒たちが大人になったら、いつか触れる機会があるかもしれないと思って読みました。
先週は善知鳥(うとう)という鳥にまつわる親子の話でしたが、今回も、親子が離れ離れになる話です。
越後で人買いの舟に連れ去られ、丹後の山椒大夫の屋敷へと売り飛ばされた安寿と厨子王。彼らの身を案じるように、物語は進んでいきます。生徒たちからは、山椒大夫の屋敷から「早く逃げればいい」という素朴な意見が聞かれました。けれども、もし逃げて後で連れ戻されるようなことがあれば、恐ろしい焼印が待っているということを説明すると、背筋の震えを感じたようでした。
紙芝居の方では、ところどころ、私自身も「なんで?」と思う節がありました。たとえば、冒頭で、「人買いが出回っているから誰も宿に留めてはならない」というお触れが出てきます。それが旅の親子にとっての難儀となるわけですが、なぜ、宿を貸さないことが人買いの対策となるのかが、よくは分かりませんでした。
そこで『山椒大夫』の方を読んでみると、越後の国守には人買いを取り締まるだけの力がなくて、ただ表面的な対策に走っているのだというように説明がなされています。
人買いたちは宿をよく利用する
→宿が使えなければ人買いが困る
→だから人買いを制限できる(だろう)
という思惑です。もちろんそうしたところで、人の性の常、利益のためには新しい抜け道をがむしゃらに見つけ出そうとするだけなのですが…。ただ、そうした暗黙の経緯が、これから安寿と厨子王の身に起こる不運の背景となっています。(>森鴎外『山椒大夫』(青空文庫))
ちなみに、安寿と厨子王の父は、北国の国守に仕えていましたが、その国守の失態に連座して、九州に左遷されたという経緯になっています。
紙芝居では、山椒大夫のもとから逃げる算段をしていた安寿たちが、三郎(山椒大夫の息子)に盗み聞きされて、焼印の話で脅かされる所で上が終わりました。さて、そのつづきはどうなるのでしょうか。それには下をお楽しみに、というところで、時間となりました。