福西です。S君が世界の国旗に興味があり、面白い本を持って来てくれました。
(『完全版・こっきのえほん』戸田やすし著、戸田デザイン研究所)
その本はS君の愛読書で、それですべての国旗と国名の対応を覚えたとのことです。「すごいなあ!」ということで、見せてもらいました。
そこで、授業ではその本を使って、算数の「集合」ということを考えてみました。
まず、国旗をいくつかの特徴で分類しました。
パターンA(形)
1)十字(スイス型)
2)ななめ入り(フィリピン型)
3)左上1/4区分あり(アメリカ型)
4)横の3本縞(ロシア型)
5)縦の3本縞(フランス型)
6)それ以外
(注意:授業ではそこまで厳密にはしませんでしたが、たとえばイギリスを1)、2)、6)のどこに入れるのかといったような細かな線引きを、調べているみんなで統一しておく必要があります)
パターンB(色の数)
1)1色
2)2色
3)3色
4)4色
5)5色
6)6色以上
パターンC(マーク)
1)太陽(丸、ギザギザの丸)(日本型)
2)星(アメリカ型)
3)月(トルコ型)
4)複雑な紋章・文字(ハイチ型)
6)それ以外(マークなし)
国旗はすべてが集まって、1つの集合(グループ)を作っています。
これを、
{世界の国旗}={アイスランド,アイルランド,・・・,レバノン,ロシア}
と表すことにします。(アイウエオ順)
それを上のように、
Aについて、
Bについて、
Cについて
と、それぞれ分類ができた時、
{世界の国旗}
={{A1},{A2},{A3},{A4},{A5},{A6}}
={{B1},{B2},{B3},{B4},{B5},{B6}}
={{C1},{C2},{C3},{C4},{C5}}
という新しい集合で見直すことができます。
{A4}などもまたそれ自体が集合です。(こういうのを「部分集合」といいます)
そこで、興味があるのは、
{A1}と{B1}などのそれぞれの集合が、重なりを持っている(つまりそこがまた新しい集合となる)ということです。
あるいは、全く重なりのないケースということもあるでしょう。(こういうのを「空集合」といいます。集合でいう0みたいなものです。)
たとえば、{A5}(縦3本縞)と、{B3}(3色)には、{フランス,ドイツ}などの「重なり」があります。
では、{A5}と、{B2}(2色)に共通するような国旗はあるでしょうか。
なければ、それは空集合です。
けれども、実は、あります。
ペルーやモンゴルがそれです。
となると、空集合という場合が、むしろ本当にそんなのあるのかな?というように思えてきます。どんな場合にも何かしら重なりがあるんじゃないか?と。
では、{A5}と{B1}(1色)で考えてみましょう。
1色なのに、3本縞という国旗はあるでしょうか。
これは、ないですね。
ということで、空集合もまた、見つけることができます。
そこで、次のような問題が作ることができます。
まず、Yuta君が完成させたAによる分類では、
{A4}(横3本)が一番多く、{A5}(左上1/4区分あり)が一番少なかった
とのことでした。
そしてYuto君が完成させたCによる分類では、
{C4}(複雑な紋章)が一番多く、{C3}(月)が一番少なかった
そうです。
では、一番多いもの同士の組み合わせで考えた問題。
{A4}と{C4}に共通するような集合は{世界の国旗}の中にあるでしょうか。
反対に、一番少ないもの同士の組み合わせで考えた問題。
{A5}と{C3}に共通するような集合は{世界の国旗}の中にあるでしょうか。
前者の問題では、
さっそく、「インド!」「イラン!」「スペインもある!」と、口々に見つかりました。
そして後者の問題でも、実は、
「あった!マレーシア!」
と見つけることができました。
確かに、二つの集合がともに大きければ、その重なりもありそうな期待が持てます(けれども必ずしもそうとは限りません)。
ところが、集合同士が小さいからと言って、重なりが全くないと言いきれないのが、意外な所です。
これはかなり難しい問題ですが、A、B、Cの集合をランダムに言った時、その共通集合が空集合である確率と、そうでない確率とは、どちらが大きいのかを推測するのも、面白いテーマだと思います。(私にも分かりません)
また、別の見方としては、それぞれの国旗は、A、B、Cの特徴について値を持っています。
たとえば、{日本}={A6}かつ{B2}かつ{C1}です。これを(A,B,C)=(6,2,1)と表すことにします。
さて、
日本以外で、(6,2,1)という国はあるでしょうか?
(実はあります。正解は記事の末尾にて)
こんなふうに問題を作って、来週は色々と遊んでみたいと思います。
この日の様子です。
(上の問題の答:バングラディシュ、パラオ)
子どもたちにとって心に残る取り組みになりましたね。S君が大切な本を先生に見てもらいたい、と思って持ってくること、また、事前準備なく、アドリブでこのような充実した授業を展開されたことに感銘を受けました。