福西です。
素話は、『うとう鳥のたたり』(青森県)の伝説をしました。
ネタ本には、『青森県の民話(県別ふるさとの民話 (39))』(日本児童文学者協会)を使用しました。(以下は授業で話すために、多少脚色しています)
今の青森市がまだ小さな村落だった頃の話です。
そこへ善知鳥 安方((うとうやすかた)という身分の高い者が、京の都から流されてきます。
彼は沼のそばに粗末な小屋を建てて住みつき、やがて村人とも親しくなります。彼は村人たちに、上手な漁の仕方や田畑の取り入れ方、薬草の知識、読み書きの手ほどきをして、尊敬されるようになります。
そんな安方が、じっと南の海を見ていると、村人たちは不思議そうに尋ねます。
安方が言うには、青森へ流されたと同時に、子供もまた鹿児島へと流され、日本の端と端に、親子離れ離れとなったことを悲しんでいるのだと。そして、今自分が南を向いているこの時に、子供が北を向いているのではないかと、そのように思って仕方がないのだと。
死期が近づいた安方は、「どうか南を向いた墓に葬ってほしい」と言って息を引き取ります。村人たちは、その言葉通りに安方を弔います。
すると、海の方から、今まで見たこともない黒い鳥の群がやってきて、安方の墓のまわりで、「ウトウ、ウトウ」と鳴くのでした。このウトウ鳥が村に来るようになってから、村は不思議と、餓える者も、病気をする者もいなくなったと言います。
そして、巣に帰ってきた親鳥が「ウトウ」と呼ぶと、中から雛が「ヤスカタ」と答える、その様子が何とも美しいものだったので、村人はこのウトウ鳥を大事に思っていたそうです。
けれども、村の中には、この鳥で金もうけをしようとたくらむ者もいたのでした。
その者が、「ウトウ」と親鳥の鳴きまねをすると、雛は親鳥だと思って、「ヤスカタ、ヤスカタ」と言って近寄ってきます。そして彼は、面白いように、まんまとたくさんの雛をつかまえます。
そこへ、親鳥たちが帰って来ます。黒い鳥たちは、血を吐くような声で鳴き叫びますが、やがて海の方へと飛び去っていきます。
すると、今度は海の方から、真っ黒い雲がやってきて、村はそれから、来る日も来る日も続く雨と嵐に見舞われたのでした。
村人たちは、「これはウトウ鳥のたたりだ」と悟り、安方の墓のそばに祠を建ててかしこみます。
すると、嵐はやみ、またもとの生活に戻ったという話です。
【補足】
授業では紹介しませんでしたが、ウトウの鳴き声が気になったので、調べてみました。すると以下のサイトが見つかりました。
「第1話 ウトウってどういう鳥ですか? What’s the Utoh ?」(北海道天売高等学校 定時制普通科)(要windows media playerインストール)
雛の鳴き声が「ヤスカタ」というようには、私は残念ながら聞き取れなかったのですが、親鳥の方の鳴き声は、なんとなく「ウトウ」と聞こえます。人懐かしい、不思議な鳥だなと思います。