0426 英語講読カズオ・イシグロ『日の名残り』

新クラスカズオ・イシグロ『日の名残り』です。

 

この作品からはいろいろなテーマが読み取れます。まず第二次世界大戦前後のイギリスの描写だと言えます。その時期はイギリスからアメリカへと覇権が移りつつある時期です。現にこの作品でも館の所有者がイギリス人からアメリカ人へと移ります。

 

イギリスとアメリカの大きな違いは身分をどう捉えるかということです。アメリカ人である館の新しい主人は執事である主人公に冗談を言うなどフラットな関係を作ろうとしますが、イギリス人の主人に長く仕えていた主人公はそれに戸惑います。

 

身分をイギリス的に捉えようがアメリカ的に捉えようが、人間はある限られた身分(環境)の中で行動しなければなりません。そこに自由はあるのでしょうか。J.S.ミルの『自由論』が自由を前提にしてそれを社会的にいかに保障するかということを論じているとすれば、カズオ・イシグロ『日の名残り』は人間にとって自由とは何かを問うているように思えます。

 

このような問題意識を持ちながら読み進めます。