『ことば6年』クラス便り(2014年2月)

『山びこ通信』2013年度冬学期号より、クラスだよりを転載致します。

『ことば6年』 担当:福西亮馬

このクラスでは、ちょうど1年をかけて、エンデの『モモ』(大島かおり訳、岩波書店)を音読してきました。冬学期の最後の授業でぴったり了読する予定です。小学生、最後の記念になればと思っています。

創作の方では、『マウントとジョージのお話』を書き綴っています。前週の担当者が、家で書いてきた物語の「続き」をクラスで音読して披露します。それから次の展開をみんなで考え、矛盾がないように摺り合わせます。いつもは34通りの筋道が同時にアイデアとして浮かびますが、その中から最終的にどれを選び取るかは、一同、次の担当者の筆を楽しみにする、というのがいつもの流れです。この稿を書いている頃には、part.10まで続いていました。ここでおおよそのあらすじを付しておきます。

マウントとジョージという少年が1900年頃のフランスにタイムスリップし、パリの街中で殺人事件を目撃します。二人はパリに自分たち以外にも未来人が潜んでいることを知ります。そして持ち前の好奇心から、未来人しか知りえない情報を手がかりにして、犯人の捜査を行います。途中、彼らを手助けする未来人(X)が現れます。そして彼の双子の兄と名乗る男が、「Xは私の双子の弟だ」と証言します。もしそれが真実なら、この兄も実は未来人ということになります。けれどもその兄は、未来人であれば知っていることについて嘘をついており、となると、兄が保証していた「双子の弟」の存在もまた怪しくなります。

そこで考えられる可能性の一つは、双子の弟は実在するけれどもそれはXとは別人であるというもの。この場合、兄かXのどちらかが犯人または共犯の筋が濃厚です。もう一つは、双子の弟が架空の人物で、兄が実はXと同一人物であるというもの。この場合、兄が犯人である筋が濃厚です。

また兄がただのうっかりなお人よしで、彼の言う通りに弟が実在し、その弟がXであり犯人であるという可能性もあります。であれば、弟がマウントたちを助けたのは、推理をミスリードして何かを目論んでいるからかもしれません。ただしその後の捜査の展開で、真犯人が出てこないとも限りません。

そのように掘り下げ、果たしてどの筋がお話として面白くなるかというところまで、「ああでもない、こうでもない」と意見を交わしています。時間はあっという間に過ぎていきます。毎週、生徒たちのストーリー・テラーさながらの意気込みには、一言、すごいなあ! と感心しています。もしみなさんがクラスに加わるとしたら、一体どのような「続き」をお考えになるでしょうか?

不定期ですが、山の学校のブログの方にも授業の記録を綴っています。また本人の許可を得て、『マウントとジョージのお話』も連載しています。よろしければあわせてご覧ください。

最後になりますが、来年から中学1年生になるY君とKちゃんの、そしてこれまで同じクラスに通ってくれていた生徒たちの、これからの雄飛を念じております。

(福西亮馬)