ことば6年(マウントとジョージのお話)その12

「その11」からの続きです。 今回はKちゃんの番です。

「と、いうことは、お兄さんが犯人ということですね?」
 ジョージがたずねる。
「そ、そうだ。いっしょに店をやっていた人とけんかしてて殺したんだ。最初の人だって、きっとお店の中のこと知られて殺したんだろ。絶対そうだ。もう、警察に連絡してやる!」
弟は顔を真っ赤にしながら主張した。兄は、ずっとだまっている。そして弟は、なんとそのまますたすたと店を出ていき、本当に警察にいって、通報をした。
 マウントとジョージは、その一部始終を、ぼう然と見ていた。まるで未来人に、ま法をかけられていたかのようだった。それでも、兄は店から出ずに、だまってじっとしていた。しばらくすると、警察官が何人か店にやってきて、
「署までご同行願います。」
と言って兄を連れていってしまった。
 ここまでの展開が早すぎて、マウントもジョージも、何も言ったりすることができなかった。ようやく気持ちに整理がつくと、マウントが口を開いた。
「何で弟はあんなにあわてていたんだ?」
「兄はどうしてずっと、だまっていたんだ?」
ジョージも不思議そうに言った。
「本当に兄が犯人だったのだろうか?」
「え?」
「だって、もし店の情報を知られて殺したとして、どうして店でいっしょに働いている人を殺さなくちゃならないんだ?」
マウントに言われて、ジョージは少し考えこむ。
「けんかしていたから?」
「そうなら遺書にあんなふうに書いたりしないだろ。『見たから殺される』じゃなくて、『うらまれているから殺される』になるし。」
「確かに。じゃあ、本当の犯人は……」
二人の頭には、同じ人物がうかんだ。きっと、まだあの辺りにいるだろう。

(Kちゃん)

【コメント】
「ここまでの展開が早すぎて…何も言ったりすることができなかった。」と、心理描写も兼ねた表現に、冴えを感じました。また、「ようやく気持ちに整理がつくと、マウントが口を開いた」と地の文で一回ためてから会話文を続ける工夫は、厚みが増してよいと思いました。

「ま法(魔法)にかけられていたかのようだった」と、ここで伏線を張ったKちゃん。さて、Ys君はどんなふうに展開してくれるのでしょうか? 楽しみです。

「その13」へ続く。