「その9」からの続きです。 次はKちゃんの番です。
お店の人の服は、さっきと同じままだ。するとジョージが前に出て、
「さっきあそこの道で会いましたよね。」
と質問した。ジョージはこの人をうたがっている。けんかしていても気の合う二人だからか、マウントはすぐに分かった。店の人は一瞬表情をくもらせたかのようにも見えたが、すぐに、
「いや、ちがいますよ。また弟なんじゃないですか。ハハハ。」
と満更でもない様子で答えた。
「でも……」
マウントが言いかけたが、ジョージがきつい目つきでにらんでくる。すかさずにらみ返し、質問を止めた。
「さっきまではどこに?」
ジョージがまた質問をする。
「ここにいたよ。ちょっと商品の整理をね。」
あたりを見回すと、たしかに、初めて来た時より少しきれいに、整理整とんされているように見える。もしかして証こ品であるサングラスとマスクを、かくしたかもしれない。
「ちょっと、失礼します。」
二人は店内をそうさくし始めた。
「ちょっちょっと、困るよ。勝手にやられちゃ、せっかくさっき整理したばかりなのに……」
店の人がなげいても、二人の手は止まらない。マウントがぼうしやくつが並べてあるところをさがしていると、おくの方のベレー帽の中から、例のサングラスとマスクが出てきた。ジョージがむこうの方でくやしそうな目つきでマウントの方を見ている。でもとにかく見つかったので、二人で店の人の前に行き、サングラスとマスクをつきつけ、二人で同時に質問した。
「「これは何ですか?」」(Kちゃん)
【コメント】
『けんかしていても気の合う二人』という、筆者から読者への語りかけがいいですね。読者はもうすでにお気付きかと思いますが、「マウントとジョージ」と「双子の兄弟」とは対比されており、物語の構造にシンメトリーがあります。
なお、最後でかぎかっこが二重になっているのは、二人同時の発言だからだそうです。
「その11」へ続く。