『山びこ通信』2013年度冬学期号より、クラス便りを転載致します。
『ラテン語初級』『ラテン語中級』『ラテン語中級講読』 担当:広川直幸
ラテン語初級では受講生四名とHans H. Ørberg, Lingua Latina I: Familia Romanaを教科書に文法だけでなく総合的にラテン語を学んでいる。9課まで進み、受講生もだいぶ慣れてきたようである。以前書いたことの繰り返しになるが、週一回の授業では練習に十分な時間を充てることができない。少しの時間(15分でもよい)で構わないのでできるだけ頻繁に(最低でも毎日)復習の時間を設けて、テクストを読み返してはラテン語で自問自答をする練習をしてもらえればと思う。その際、特に意識して新出語彙を使うのがよい。文法ももちろん大切ではあるが、語彙増強のほうが優先順位は上である。
ラテン語中級では受講生二名とHans H. Ørberg, Lingua Latina II: Roma aeternaを用いて講読と作文を行っている。50課まで進んだ。Ørbergの教科書は56課で終わりなので、いよいよ終盤に入ったと言えるのだが、一課ごとの分量がかなりあるので、終えるにはまだしばらく時間がかかるであろう。最終課の「スキーピーオーの夢」を目指して頑張ろう。
ラテン語中級講読では受講生一名とペトラルカの『わが秘密』第一巻を読んできた。この山びこ通信が出る頃には、ペトラルカにはしばしの別れを告げて、Peter Dronke, Nine Medieval Latin Playsをテクストに中世ラテン語劇の世界に足を踏み入れているはずである。ルネサンスや中世のラテン語を読んでみたいが、どの辞書や文法書を使えばよいのか分からないという人もいるかと思うので、覚え書きを残しておく:新版でも旧版でも研究社の『羅和辞典』は収録語彙が多いのでかなり役に立つ。Lewis & Short, A Latin Dictionaryは中世以降の綴りや語法に言及していることがある。Lewis & ShortかGeorges(昨年新版が出たようである)をメインの辞書にするのがよい。それに加えて、中世の新出語彙やそれ以前からある語彙の意外な転義を調べるためにはLatham, Revised Medieval Latin Word-List from British and Irish Sourcesが手軽で使い勝手がよい。文法は國原吉之助『新版中世ラテン語入門』の前半に一通り目を通しておけば、古典ラテン語との違いの大枠が把握できる。