ことば6年(マウントとジョージのお話)その8

「その7」からの続きです。 次はKちゃんの番です。

「えっどこどこ? 早く追いかけないと。」
「…えっと、たしかあっち。」
二人は、ジョージが指をさす方向へ走った。しかし、走っても走っても、あの男はいない。とうとう行きどまりとなって、二つの道に分かれた。どちらの道の先にも、人かげはない。
「ちっ! 逃げられた。」
ジョージがなげいた。
「ジョージ、からかっただろ。」
マウントがジョージをうたがい始めた。
「いや、それはないって。しっかり見た。例のかっこうもしてたし…」
「なんだよ、ふつうに言えばいいじゃん。サン…モゴモゴ。」
ジョージがマウントの口をふさいだ。
「やめろよ。またさっきみたいにへんな目で見られるぞ。ほら今も…」
「えっ! 何も変なこと言ってないけど、また見られてる。何で?」
マウントは不思議そうに首をかしげた。
するとジョージが、
「あっ! 魔法がとけてきてるんだ。だからこっちはふつうでも、むこうには外国語にしか聞こえないんだ。」
「じゃあもう一回やろー」
「ダレデモペラペラナニゴデッモー」
二人はじゅ文をとなえた。
「あっ! あそこにお店の人がいる! 話しかけよ~。」
マウントが走っていった。
「こんにちは。」
とマウントが話しかけると、
「やぁ。君たちか。」
とふつうに返してくれた。ま法はきいているようだ。そのまま楽しく話していると、ジョージが言った。
「マスクもサングラスもしていないけど、さっきの未来人と服が同じだ。

(Kちゃん)

【コメント】
古着屋、サングラスとマスク、そして今回の服装という鍵。それらのアイデアを練ってくれたKちゃんには、一本の筋の通った目線が感じられます。
「走っても走っても、あの男はいない。」という表現にも臨場感がありますね。

前回から間が開いたので、これまでの流れをまとめておきます。

冒頭の事件で殺された人物(仮にAとします)。これは古着屋の共同経営者です。Aは遺言で、「自分は黒いメガネ(サングラス)と白い布(マスク)をした男が人殺しをする現場を目撃してしまい、そのことで自分もまた消されるだろう」と言っています。つまりそれ以前にも殺人事件があり、彼は二人目の犠牲者ということになります。(最初に殺された人物を仮にB、犯人をXとします)

次に、マウントとジョージに有益な魔法を教えてくれた人物(仮にY)。Yはまだ敵か味方か分からない謎の人物ですが、魔法を知っていることから、未来人であることが分かります。

そして殺されたAと古着屋を営んでいた、共同経営者の店員(仮にZ)。このZは、Yの風貌に実はそっくりでした。けれどもZが言うには(それが嘘でなければ)、「Yは自分の双子の弟ではないか」とのことでした。

さてそこで、双子の兄弟ということが、次の結論を導き出します。

Yは魔法を知っている、つまり未来人。ならば、その兄のZもまた未来人でなければならない、と。(双子と言っている以上、同じ時代=未来に生まれた血縁者ということになります)

一方、サングラスとマスクは、当時はまだ知られていないものでした。つまり、未来人でなければ知らない情報です。
ということは、「サングラス?マスク?」と一度しらを切ったことのあるZは、未来人であるならばその事実を隠しており、未来人でないならば先の双子という発言があやしいことになります。

また、犯人のXは、サングラスとマスクをしていることから、未来人となります。

そこで、未来人という関係から、マウントとジョージの脳裏には、以下の二つの推理が渦巻いています。
1)「双子の兄弟であるYかZ、どちらかがXと同一人物?」
2)「Zの発言自体がウソで、実は双子の弟などおらず、YとZは同一人物?」

「その9」へ続く。