福西です。この日は、第3巻に入る前に、おさらいをしました。
前々回に証明した三平方の定理(1.47)をもう一度、自分の力で何も見ずに証明できるかどうかを試してもらいました。
最初10分ほど時間を与え、以前の自分の書いた証明を見てもらいました。その時、目でじっとノートを追っているので、「手で書いた方がいいよ」(式をフォローした方がいいよ)とアドバイスしました。そういう時に素直なR君は、すぐにそれを実行していました。それからいざノートを閉じて、何も見ない状態で発表してもらいました。
以下、R君の証明です。(ここでは代理の説明です)
『原論』命題1.47
△ABCについて、もし∠C=90°ならば、a2+b2=c2であることを示す。
まず、斜辺の正方形の中に、三角形ABCの反対側の三角形(長方形になるための片割れ)を描く。
この発想が、R君の出発点でした。
△AEDは、直角三角形。
(補題)△AED∽△ABCである。
(証明)相似の条件:三角形の2つの角が互いに等しいこと。
∠ADE=90°、∠ACB=90°。よって∠ADE=∠ACB。(1つ目の角)
∠EAD=90°-∠DAB=90°-∠CBA
∠BAC=90°-∠CBA
よって、∠EAD=∠BAC。(2つ目の角)
ゆえに、2つの角が互いに等しいので、△AED∽△ABCである。
この相似はなぜ言いたかったかというと、辺ADとEDの長さを知りたかったからです。
ED=x、AD=yとおく。
そして、△ABCと△AEDの辺の相似比は、
AC:AD=b:a
なので、△AEDの辺は、△ABCの辺のa/b倍。
これが分かれば、あとは簡単です。
つまり、
x=a×a/b=a2/b
y=c×a/b=ac/b。
そして、ここからが醍醐味です。
△ABEの面積を、二通りの仕方で表します。
△ABEの面積は、
1)底辺×高さ÷2で計算すると、
△ABE=cy/2=ac2/2b。
2)△AED+△ABDで計算すると、
△ABE=△AED+△ABD
=xy/2+ab/2
=a3/2b+ab/2
=a3/2b+ab2/2b
=(a3+ab2)/2b。
二通りの仕方で表した面積は同じなので、
ac2/2b=(a3+ab2)/2b (b≠0より2bを消すと…)
ac2=a3+ab2 (aでくくると…)
ac2=a(a2+b2) (もう見えてきましたね!あとはaで除すと…)
c2=a2+b2。
ゆえに、
∠C=90°ならば、a2+b2=c2である。
これが示すべきことであった。
R君は途中、a3の項が出てきても、(それまでのステップが間違っていないことから)あきらめずに計算を実行したところ、見事証明することができました。また相似自体はまだ学校では習っていなかったのですが、a:b=c:d⇔ad=bcは知っていたので、それを手掛かりに証明してくれました。
12月ぐらいに一度証明し、もう一度証明できるかを試し、そしてこの日は実際には三度目の塗り直しをしたことになります。
この時、R君の顔に充実した安堵が見られました。心の中でガッツポーズをしてくれたR君でした。
その余勢をかって、いよいよ第3巻に入りました。
第3巻の最初に書かれている定義を説明し、残りの時間で命題1「与えられた円の中心を作図せよ」を考えました。次回その続きをします。