高木です。
クラスの最初に、K君は、夏休みの宿題で書いてきた「物語」を提出してくれました。原稿用紙で合計13枚の大作です。私はまだ読めていないのですが、K君が嬉々として話してくれたところによると、沢山の恐竜が登場するのだそうです。しかも恐竜について綿密な下調べもおこなったのだそうです。クラスが終わった後にお母様にうかがうと、K君は作文にとりかかる前に構想のための膨大なノートを作成したのだそうです。読ませてもらうのが本当に楽しみです。
今日は、先週の「夏休みの思い出」の作文の続きに取り組みました。先週の時点ではまだ途中だったのを最後まで書いてきてくれていたので、今日はその内容や文章の確認(添削)を行ないました。
「夏休みの思い出」では、印象に残ったことを大きく分けて3つ書いてくれています。1つ目は怖い夢を見たこと、2つ目はセミの羽化を見たこと、3つ目は九州へキャンプに行ったことです。特にセミの羽化の過程を活写したくだりは非常に繊細で、K君の観察力の高さがうかがえました。
冒頭から順々に文章を確認していると、K君の表情がなんだか固いので、聞くと、夢を思い出して怖いのだそうです。K君の夢には一般的に怖いとされるもの(たとえば幽霊、追いかける人)が出てくるわけではありません。にもかかわらず、夢の情景が、その作文をとおして、奇妙なリアリティーをもって浮かびあがってきます。私も不思議な気持ちになりました。
夢を見て、夜中の3時に目が覚めて、それから心がざわついて寝付けず、夜空の黒色が青色に明けだすのを見て、ようやく安心して眠ることができた、という描写は、見た夢の印象の強さを暗に物語っています。「夏休みの思い出」として、こうしたことを書いてくれるK君の、着眼点が非常に面白いと感じました。
来週は2つ目の思い出の途中から、文章を確認していきます。
山下です。
>K君は作文にとりかかる前に構想のための膨大なノートを作成したのだそうです
K君らしいエピソードですね。先週K君の学習記録表をじっくり読ませてもらったのですが、あの記録表の真摯な取り組みもまた、立派な「構想のためのノート」の一部といえるでしょう。日常の学習記録を数行にまとめる、というただ単にそれだけの記録表ですが、言葉の表現の工夫が随所に感じられます。個人のつぶやきというレベルではなく、「読み手」をしっかり意識して「表現」できています。小林秀雄のいう「理想的読者」をイメージできていると思われますが、まずは、ご家庭での両親との言葉のやりとりがベースとなっていること、次に、クラスでの先生とのやりとりが、彼の「理想的読者」形成に大きな力となっていると私は傍観者として推察しています。