ことば1年

今日は、先週解けなかった「6つのりんご」の続きを考えてもらおうと思って待ち構えていたところ、びっくり、家でお母さんと一緒に解いてきた生徒が一人だけいました。おめでとう!

でも、すぐに答を言ってしまうと、「なーんだ」となるので、解けた生徒から、まだの生徒に少しずつヒントを出していってもらいました。

「あ!わかった」と一人ずつ「解った側」に加わっていき、最後の一人が、身振り手振りのジェスチャーをみんなから受けながら、「なーんや、そういうことやったんかー!」となって、全員カタルシスを味わえたところで、

「じゃあ、みんなで言ってみよう」
「せーの、~~!」
「あたり!」

という結末を迎えました。

そこで、これはどうかな? ということで、また新しい問題です。

ある男が、おさけをのんだかえりに、家にむかってよっぱらってあるいていた。街灯も月明かりもなく、おまけに男のふくそうはまっくろだった。そこへ車が一だい、ヘッドライトもつけずに はしってきた。しかし車のうんてんしゅは、よっぱらいのすがたをいっしゅんでみつけて、よけてはしることができた。なぜか?

「よっぱらってって、なんかお父さんみたいやなあ!」

「はい! その人の服のボタンは、光を反射しますか?」
「いいえ、ボタンも黒色で、光を反射しない材質のものです」

「めがねをかけていて、それが光った?」
「いいえ、めがねはかけていませんでした」

「かばんとか持っているものが光った?」
「いいえ。持っているとしたら、それも黒で光を反射しないものでした」

「道の横側には、壁か林がありますか? それがバックの色になって、黒い服の動きが見えたのでは?」
「なるほど。残念ながら、道の両側は原っぱでした」

「道は曲がり道ですか?」
「いいえ、まっすぐです」

「なら、向こう側から来る車のヘッドライトで、人影が映って見えた?」
「うーん、なるほど! それも正解にしてもいいです。ではすれ違う車も無く、道を走っている車が一台だけだったとしたら、どんな場合が考えられるでしょう?」
「ということは、道は一方通行ってこと?」
「はい、そういうことにしておきましょう」

「ドライバーの人は、ちょっとぐらい暗くても見えた?」
「いいえ、ドライバーの視力は普通です。でも、「ちょっとぐらい暗くても」のところが、すごくおしいところをついています」

「ねことか、夜でも目の見える動物が、車の中にいて、それが知らせた?」
「残念、動物はいませんでした」

「その人には光が当たっていますか?」
「はい。当たっています」
「えー? それってどういうこと?」
「さあ、でもいきなり鋭い質問ですよ」

そこで、「電気を消して実験をしてみよう!」ということになり、実際部屋の中を暗くしてみました。

「~君、黒い服や!」というわけで、その生徒がよっぱらいの役に。
「うーん、確かに黒は見えにくいなあ」
「赤と黄色の服は目だってるなあ」
「電気を消しても、こんだけしか解らんかあ…」
「だって電気消したって、完全に暗くなってないから、わからへんなあ…」(←実は答に近いことを言ってます)

というわけで、もう一度問題に戻りました。
何度も、道の図を描きますが、描き加えるだけまたうーんとうなる始末。

「道は広いですか?」
「そうですね、よっぱらいの人をよけられるぐらいの道幅があると考えてください。白川通りの片側の道ぐらいです」

「顔の部分が白くて、それがドライバーに見えたのですか?」
「いいえ、車はよっぱらいの後ろからやってきて、よっぱらいの頭の後ろ、つまり髪の毛が見えています。なので、全身黒色とみなせます」
「もしかして禿げていた!?」
「いいえ、ちがいます」

「季節はいつですか…(とは聞けないので言い直し)えーと、季節は夏ですか?」
「はい。7月ぐらいにしておきましょう。ただ、冬でも問題は解けます」

「その日は満月ですか? 新月ですか?」
「うーん、それなら、満月ということにしておきましょう」
「エー、これも関係ないのか…」

「その日は雨でしたか?」
「いいえ」
「晴れでしたか?」
「お! 近付いてきましたね。晴れと本当は言いたいところですが、さっき満月にしてしまったので、もし晴れだったら月明かりがあることになってしまうので、くもりとしておきます」

「ドライバーには、くもり空が見えていますか?」
「はい」

「よっぱらいの人に、車の音が聞こえたからですか?」
「なるほど! 目ではなくて耳という発想の転換が鋭いですね。うーん、それも正解の一つと思ってもいいですよ。では、それとは全然違う、他の正解も考えてみてください」

「わかった! よっぱらいの人が、「あらよっとっと」となって、車をよけられた」
「それも、発想の転換でいいですね。でも残念ながらよけたのはドライバーです。ちゃんとよっぱらいの人が見えていたので。逆に、よっぱらいの方は車が横を通り過ぎていくのを見送って、はじめて気付きました」

「ドライバーには、暗闇の中が見えている?」
「いいえ、<暗闇>は見えていません」

そこで、道の絵を前で白板に描いていた人が、「ん?」と思ったのか、二種類の絵を描き出しました。それは、道とその両側を薄暗く塗ったものと、全体を白くしてあるものとでした。

「ドライバーに見えたのは、この道の暗い方ですか?」
「いいえ」
「反対のこっち側(明るい方)ですか?」
「はい、そうです」

「じゃあ、よっぱらいの人は、どこらへんにいたときに、ドライバーから見えましたか? ここらへんですか?(と、車の前方の道を次々と点で指していく)」
(全て)「はい」

「ここらへんぜんぶでもですか?」(と、車の前の道全部を囲む)
「はい」
「車の後ろにいても?」
「うーん、それだと、バックミラーに見えたかな?」

「道は、実はあんまり暗くなかった?」
「はい、その通りです」

「よっぱらいの人には、太陽光線はあたっていますか?」
「はい! すごい質問ですね」

「道の向こうに山はありますか?」
「いいえ、山の間から…と言いたいのだろうと思いますが、山は無いことにします」

「6時ぐらい?」
「えーと、それはいつの?」
「夜の」
「ああ…でも近い! もっと明確な答があります」

「~~?だから?」
「…う! はい、正解です。では、みんなの意見を一つにしてください」
「せーの、~~だから!」
「大正解」

「やったー、二人目のR先生も倒したぞ! ヨワッチイなあ!」
「ぼくたちが暗闇と思っていたのは、思い込まされていたってわけやな。確かに、問題にはどこにも書いてないもんなあ」

というわけで、次回の問題も乞うご期待です。

今日の素話は、『寿限無』でした。