中学理科の様子を、山びこ通信(2013/6)より転載いたします。
このクラスを担当させていただいて2年目になります。初めは、MとH君の2人でしたが、昨年度の途中からY君が加わり、またこの春学期からはR君も参加して、だんだんと輪が広がってきているのを嬉しく思っています。
「質問コーナー」が、生徒さんのある1つの質問を発端として、クラスの定番となってきた経緯については、前号の本誌(2012年度・冬学期号)でお伝えいたしました。「質問コーナー」というのは、いわば対話の時間です。たくさん寄れば、それだけいろんな質問も出てくるし、話もふくらむので、この時間がますます面白くなってきています。今年度の春学期中に出た質問としては、最も深い海として知られるマリアナ海溝について、深海魚リュウグウノツカイの生態について、気功のメカニズムについて、人間の水上歩行(いわゆる忍法 “水蜘蛛の術”)についてなど、多岐にわたります。受け付けた質問については、基本的に次回までに私が調査し、クラス中にお答えします。たんに一方的に答えるだけではなく、それをきっかけとした彼らとの対話から、こちらが教えられることも多く、私自身、毎週この時間が非常に楽しみです。
こうした「質問コーナー」の盛況ぶりを見て、昨年度の末からは、「自由研究」にも取り組んでもらっています。その構造は、「質問コーナー」と同じです。まず疑問がある。次にそれを調べる。最後に発表する。この3段階です。違いは、「質問コーナー」では、この調査と発表を私が担っているのに対し、「自由研究」では、これらを生徒さん自身が主体となって担うというところにあります。もちろん、調べるのには時間と労力が要ります。また、伝わりやすい発表のためには、パネルを用意するなど、その方法にも工夫が欠かせません。ですから、最初の疑問(=テーマ)は、自分が没頭できるものにする必要があります。「沖縄の絶滅危惧動物」(H君)。「未来の車(新素材、浮上走行)」(M君)。「宇宙に果てはあるのか」(Y君)。「肉食恐竜の種類と生態」(R君)。「先生に質問するより自分で調べたい!」と思えるような骨のあるテーマを、それぞれ見つけてくれているのが、頼もしいです。
ところで、今年度からは、中学3年生の生徒さんたちの強い要望もあって、「自由研究」とは真反対の性格を持ちますが、高校入試レベルの問題演習も進めています。ただ、受験対策とはいえ、基本はあくまでも復習です。復習に徹して基礎を叩き込んでおけば、応用問題にも対応できます。もちろん、解法のパターンを覚え込むことも、ある程度は必要になってくるでしょう。しかし、そればかりをしていたらきりがありませんし、本質的には意味もありません。高校入試を、知識をたくわえ、本当の思考力を養うきっかけにしてほしいと思っています。
さて、以上をお読みいただければお分かりのとおり、「質問コーナー」「自由研究」「入試対策」と、クラスの内容は盛りだくさんです。それに対してクラスの時間は80分。やや窮屈な印象を持たれるかもしれません。しかし、1回のクラスでこれらすべてに取り組むことは稀です。臨機応変にローテーションを組み換えつつ進めています。それになにより、どれも生徒さんの声をきっかけとして始めた取り組みということもあってみんな積極的で、実際は「気がつけば80分経っていた」という感触なのです。とくに、上記に加えたこのクラスの4つ目の取り組み、数週間に1度めぐってくる「実験」は、みんなの待望の的です。写真は、鉄が花火のように燃える実験の様子。このときR君は言いました。
「火が泳いでいるみたい!」
(文責 高木 彬)