福西です。
今日は、昔なつかしの『ゴレンジャー』の中に出てきたなぞなぞを枕にして、調子が付いたところで、本番の新しい形式のなぞなぞに挑戦しました。
問題
しめきったへやに、テーブルがあり、そのうえにかごがあります。かごのなかには、りんごが六つあります。へやには、六人の女の子がいます。その女の子が一人一つずつりんごをもらいました。でも、かごのなかには、りんごが一つあります。なぜ?
これは推理パズルなのですが、解答者の生徒たちは、出題者の私に「はい」か「いいえ」で答えられるような質問であれば、何回でもでき、そのやり取りで答を探していきます。ちょうど「なぞなぞ」+「二十の扉」のようなものです。以下は私の覚えている範囲での生徒との問答です(うろ覚えなのですみません)。
・「はい。6つです」
T君「そのりんごは、食べられるりんごですか?」
・「はい」
Kちゃん「そのりんごは、上等ですか?」
・「うーん、普通の1個100円のりんごです。ただし、問題を解く上では上等でもかまいません」
ここで、「りんごは、何でも関係ないんやって」とKちゃん。するとT君のつるの一声で、「作戦会議! みんなあつまれー!」とみんなが車座になって考え始めました。(その雰囲気が熱心なだけに、ファニーな感じがしました^^)
Y君「問題の文章の中に答が隠されているんやろう?」
H君「この「しめきった」が、どうもあやしいなあ…」
T君「よし、一文字ずつ問題の文章を丸していこう」
などのひそひそ声が聞かれ、時折生徒の方から繰り出される質問に、私が「はい」「いいえ」を答えました。そのたびに「ああ、ちがったかあ」と残念がりながら、次の可能性を考え直しました。
S君「5人ではありませんでしたか?」
・「いいえ、6人いました」
Y君「だれかがりんごを持ってきた?」
・「いいえ。りんごは部屋の中にあったりんごだけでした」
T君「お母さんとか、とちゅうでだれか入ってきましたか?」
・「いいえ。部屋はしめきってあり、人の出入りはありませんでした」
N君「かごに穴が開いていた?」
・「なるほど。でも、いいえ。ふつうのかごでした」
S君「部屋の中に、かごは2つありませんでしたか? もともと1個だけりんごの入っているかごが部屋のどこかにかくしてありませんでしたか?」
・「いいえ、かごは1つだけでした。かくしてあるかごもありませんでした」
Kちゃん「このかごは、問題に関係ある?」
・「はい。実はこのかごがないと、問題は成り立ちません」
H君「だれか、もらいそこねた人がいた?」
・「いいえ、それはいませんでした」
N君「その部屋は暗かった?」
Kちゃん「分かった。もらったと勘違いしている人は?」
・「なるほど。どちらもいいえです。みんな自分がもらったことをはっきりと分かっています」
S君「1このりんごを切ってわけましたか?」
・「残念、いいえ。まるまるりんご1個をみんなもらいました」
Y君「りんごが0個でも「ある」という答え方はある?」
・「いえ、かごの中のりんごは確かに存在する1こです。そしてそのりんごは、確かに6個のりんごのうちの1個です。」
Y君「でも、たとえば家でもバナナが3つ合って、1つをぼくがたべて、もう一つを妹が食べて、1つをお母さんが食べて、それであれ、もう一つあるかな?と思っている時は、「0のバナナがある」と思えるよ」
・「なるほど。その「ないのにある」と思える日常のイメージを思い出すと、いい線をたどれるかもしれません」
と言うと、Y君は立ち上がるなり壁に額を押し付けて、「うーん!」と思い出そうとしていました。
S君「りんごは3つでも同じ問題はできますか?」
・「はい。その時女の子も3人だったら、同じようにできます」
T君「2人でも?」
・「はい。その時は、2人とも1こずつもらって、1つがかごの中にある状態が作れるか、という問題になります」
Y君「りんごは2つずつもらっても問題はできる?」
・「ああ、それならできません。その時は、かごの中にあるのは、2つになります…」
と言いかけて、あわてて口をつぐみました。そこでまた生徒たちの作戦会議でした。
N君「1個多くもらった人はいませんでしたか?」
・「いいえ。やっぱりちゃんと1個ずつもらいました」
H君「それは透明人間の仕業ですか?」
・「いいえ。この部屋には目に見える人間が6人しかいませんでした。また幽霊でもありません」
こういう「可能性を外すための質問」というのも大変重要です。
T君「この問題自体は、なぞなぞですか? クイズですか? トリックですか?」
・「なるほど、いいえ。「なぞなぞ」とは言ったけど、現実の話です。問題の指す状況にトリックはありません。ただトリックがあるとすれば、問題文を読んだ先生の言い方にです」
T君「それって、なんか、推理探偵みたいやな! トリックを見破れ、みたいな」
T君「それは、科学的に証明できることですか?」
・「どちらかと言えば、はい。科学の力を使わなくても、日常生活でよく見かけます。今この6人(生徒)でも同じことができます」
S君「ぼくたちのなかで、それをけいけんした人がいますか?」
・「ああ、それはちょっと分かりません」
Kちゃん「りんごが食べられないからといって、遠慮して一個かごに返した人はいませんか?」
・「なるほど。いいえ。遠慮した人はいませんでした。たとえ遠慮したとしても、りんごを全員がもらった瞬間が、今問題となっているシーンです」
N君「最初から、もらわなかった人がいなかったですか?」
・「いいえ、やっぱり「みんな」もらいました。後で返した人もいませんでした」
Kちゃん「りんごをえんぴつにして、かごをふでばこにかえても同じ問題は作れますか?」
・「はい。その通りです」
これはなかなかいい思いつきです。それなら、実際やってみようということで、Y君のふでばこで、6本えんぴつを入れた状態を作って、それを6人が1人1本ずつ抜いていくという実験を何度もしました。でも、何回やっても、「あれー? ふしぎだなあ。やっぱり最後は0本や」ということが続きました。
そこで、同じように鉛筆を1本ずつ抜いていって、(ふでばこが0本になるので)最後の1本をとることをN君がためらっていた時、私が「今答に近い状況です」。と助け舟を出しました。するとほとんどの生徒が「え?何のこと?」という顔をしていたのですが、Kちゃんだけがしっかりその状況を覚えていて、矢継ぎ早に質問を繰り出しました。
Kちゃん「N君に関係がありますか?」
・「いいえ。最後の人は誰でもいいです」
Kちゃん「N君は鉛筆を取らずに自分のふでばこを触っていましたが、それは問題に関係がありますか?」
・「いいえ」
Kちゃん「(かごの代わりの)Y君のふでばこは、問題に関係がありますか?」
・「はい」
ここで、また5人が鉛筆を1本ずつ抜き、最後の一人でN君が鉛筆を取らないで、筆箱の中に1本ある状況を作り出し、Kちゃんが
Kちゃん「答は、この状況に近いですか?」
といったので、私は「はい」と答えざるを得ませんでした。
Y君「ここからN君が鉛筆を抜くと、答から遠ざかりますか?」
・「はい」
しかしそこまでで、残念ながら、「ふでばこに1本あること」と「6人目も1本もらう」という2つの条件を同時に満たすような説明を見つけることができず、時間内に答にたどり着くことはできませんでした。(答はもちろん秘密です)
この手の問題は、解けることよりもむしろ、その過程の中に「ことば」の要素が詰まっています。また生徒たちの意外な一面もかいま見られて面白いです。
次回も別の問題を用意してチャレンジしてみたいと思います。
これって本当に小1のクラスですよね。すごいなあ。みんな頭の中に一杯電流が流れているのでしょうねえ。
この問題は昼間に亮馬先生に出してもらったのですが、私と同じ質問(6を3に変えても問題は成立しますか?)を
している生徒がいて、うーむ、彼が大人と同じ発想をするのだろうか、それとも私が子どもと同じ発想をしているのだろうか、と(笑)。
自分で解けたとき、むちゃくちゃ嬉しいです。思わず飛び上がるかもしれません(^^)V
簡単ですね^^
5人はりんごを1つずつ普通に取り、だれか一人はかごごとりんごを取れば、テーブルの上にりんごはなくてもかごの中には1個残っているということになりますね。
コメントをありがとうございます。種明かしを聞くとなるほどと思いますが、考えがへたに袋小路に入ると、なかなかそこから抜け出せずにうんうん唸ることもあります。子どもたちの習性で面白いと思うことは、こうして興味深い経験をすると、今度は自分たちで「そのような問題」を作ろうとすることです。今、ちょっとしたクイズづくりブームが訪れているようです。