高木です。
今日読んだのは、北原白秋の「クレーン」です。
クレーン立ってる、お空へ向いて
クレーン吊ります、揺れてる鉤(かぎ)で。
クレーン突き出す、片手の腕を、
クレーン、がっちゃん、力があるよ。
クレーンうごいた、羊をのせて、
クレーン、そろりとお船へまわす。
クレーン、夕焼、さざなみ、小波、
クレーン、がっちゃん、羊をおろす。
クレーン見ないか、十五夜さまだ。
クレーン吊ります、こんどは影だ。
話してるうちに、T君とM君は、「影」が「姿」や「光」のことでもあるという、かつてことばのクラスで触れたことを思い出してくれたのでしょうか、「月影!」と言ってくれました。
「月がまだ下のほうにあるから、クレーンでひっかけれる」とT君。
漢字の成り立ちは、「心の部」の二回目です。今日は「息」「念」「意」「感」をとりあげました。
最近は、成り立ちを学びながら、M君とT君は知っている熟語についても発言してくれます。「信念」「食感」など、次々に出してくれるので、私はそのつどホワイトボードに書きとめます。
そのなかでは、「息」の熟語がなかなか難しいようでした。「生息」と「利息」をすでに私がプリントに書いてしまっていたのもあります。それでも「鼻息」を出してくれました。
「息」という字は、「自」と「心」から成ります。「自」は、じつは鼻の形です(「自分」のことを指差すときには、たいてい「鼻」の頭を指します)。だから「息」は、鼻で呼吸して生きること(息吹、生息)や、心情が呼吸に表れること(嘆息、気息)になります。
「鼻息」という言葉はおもしろくて、成り立ちから考えると、「息」の「自」の部分がすでに鼻であるところに、さらに「鼻」を加えるわけで、その意味では「鼻」がものすごく強調されています。「フン!」という感じでしょうか(笑) 「鼻」は、「自」が「私( I )」の意味に使われるようになってから、のちにそれと区別するために、鼻息の音(「畀(ヒ)」)を付け加えた字なのだそうです。
「ひみつ道具」作りでは、今日もM君とT君は独創的な発明をしてくれました。
M君が作ってくれたのは「完成ライト」です。このライトは、懐中電灯のような形をしているのですが、そこには①〜⑥までのボタンが取り付いていて、それらを押すことで様々な機能をもった光を照らすことができます。M君は、
「①がゲームなおしライト
②が雲ライト
③が完成ライト
④がスモールライト
⑤がビックライト
⑥がなんでもなおしライト」
と書いてくれています。壊れた物を直したり、物の大きさを変えたりする機能のなかに、光で雲を発生させる「雲ライト」のあるところも、M君らしく、素敵です。また「完成ライト」を「がったいテレビ」につなげることで、⑦、⑧…と、新機能を増やしていくことができるのだそうです。一つの器にたくさんの物をコレクションして収納していくことの、あのなんとも言えない充実感が、この「完成ライト」にもあるように思いました。
T君は、「再生セット」という、これまた楽しいひみつ道具を発明してくれました。
この道具は、「部品カメラ」「部品製作機」「本体製作機」「部品採集機」「充電機」の五点セットです。この機械群をどのように使うかは、発明者T君に説明してもらいましょう。
「この道具は物がこわれた時に使う。 まず、部品カメラで全ての部品の写真をとる。そして部品採集機に写真を入れる。そしたらカメラでとった部品だけが採集機の中に入る。集めた部品を部品製作機の中に入れると われていた部品も もとどうりになる。 その部品を本体製作機に入れれば、もとどうりになる。 電気が切れた時は充電機にコンセントをさせば充電できる。」
非常に整理された文章です。機械どうしの面白い関係がよく分かります。また文字もできるだけ漢字で書きたいらしく、そのつど「『作ること』を熟語ではなんて言うの?」とか「『製作』と『制作』のちがいは?」というように、疑問を出してくれました。オリジナルな発想や精密な絵とともに、時間ギリギリまで粘ってT君が紡いでくれた言葉に、私は真摯なものを感じました。
これら「ひみつ道具」は、すべて彼らのオリジナルです。今日は、はじめはただT君とM君の制作プロセスを眺めて、彼らの話にうなずいていたのですが、途中で「先生も作ったらええのに」と言われて、私も「ひみつ道具」を作ってみました。そこで気づいたことは、実際にやってみるとなかなか難しいということ、そして彼らの発想が本当に豊かだということでした。
子どもたちの発想はユニークで新鮮です。大人向けの試験(入学試験、採用試験)で「何かひみつ道具を考えて紹介してください」と言ってもみな困るでしょう(笑)。子どもの発想がユニークだというのは定番の言い方ですが、高木先生のクラスを見ていると、どうもそれは「詩心」の有無ではないかと思われます。かりにそうなら、大人になってもそれを失わない人(高木先生もその一人)は、おおいに「ひみつ道具」を発明できる資質があるんじゃないかと(笑)。じじつ、クリエイティブと呼ばれる仕事をする人は、大なり小なり詩心をお持ちですね。すくなくとも、子どもたちと接する大人はみなそれを大切にしないと話がかみあわないでしょうね。