今号の山びこ通信(2013/6)から転載いたします。
『将棋道場』(担当:百木 漠)
新年度になり、将棋道場にも少し顔ぶれに変化がありました。
新たにFuくんやH.Soくん、Y.Soくんなどが参加してくれるようになり、最近は少人数ながらも相変わらずの賑やかな雰囲気のなかでみんなで楽しみながら将棋を指しています。H.SoくんやY.Soくんはまだ将棋を指し馴れてはいないようですが、元気に道場の雰囲気を盛り上げてくれています。Fuくんは5月の道場に来てくれたときに4月よりもぐっと強くなっていたように感じました。手の読みはまだこれからですが、将棋の形が良いです。三名とも今後に期待しています。
毎回行なっているワンポイント講座では、みんなで詰将棋を解いたり、矢倉囲いという戦法を解説したりしました。将棋道場に長く通ってくれている子たちは、もう3手詰めくらいならば時間をかけずに解いてくれるようになりました。Juくんなどは5手詰めや7手詰めに挑戦していました。中務先生の助けを借りながらも、簡単な7手詰めが解けていたのは大したものだと思います。将棋にとっての詰将棋は、野球にとってのキャッチボールみたいなもので、将棋が強い人はみんな基礎的なトレーニングとして日常的に取り組んでいるものです。どんな人でも詰将棋をたくさん解いていれば、それだけで必ず強くなれます。将棋を強くなりたい子供たちにはぜひ積極的に詰将棋に取り組んで欲しいものです。
ところで3月末から4月末にかけて、プロの将棋界では電王戦というイベントが行われていました。これは、プロの将棋棋士5名とコンピューター将棋5台が、毎週一組ずつ団体戦で戦うというものです。「初めてプロ棋士がコンピューターに負けた!」ということでニュースなどで報道されていたのをご覧になった方もおられるかもしれません。プロ棋士は若手からベテラン、A級八段まで幅広く選ばれた5名、コンピューター将棋は世界選手権の上位5台がそれぞれ1名(1台)ずつ戦うという内容だったのですが、結果はプロ棋士(人間)側の1勝3敗1引き分け。電王戦が始まる前は、プロ棋士側は「少なくとも3勝して人間の維持を見せねば」と意気込んでいたので、結果的には大敗だったと言わざるをえません。どの将棋も大熱戦で、その差は僅かなものが多かったのですが、とはいえ負けは負けです。特に、最終局でA級棋士(プロ棋士のトップテンのひとり)である三浦弘行八段が東大GPS将棋に大敗したことは、多くの将棋ファンとプロ棋士に衝撃を与えました。「コンピューターがプロ棋士を完全に凌駕する日は、思ったよりもずっと早くやってくる」ことが明らかになったからです。このことをどう受け止めるかは、人それぞれに意見の分かれるところだと思いますが、現在、将棋界がひとつの歴史の転換点を迎えていることは間違いないでしょう。
とはいえ、すでに10年以上前に世界トッププロがコンピューターに敗れたチェス界などを見ても分かるのですが、コンピューターが人間の力を上回ったからといって、人間どうしが将棋やチェスを楽しむ魅力がなくなるわけでは決してありません。むしろコンピューターの発達によって新しい将棋の魅力が発見されることもあるでしょう。将棋道場では、人間どうしで将棋を指す楽しさや悔しさなどを存分に味わってもらえれば、と考えています。
(百木 漠)