ことば1年

 福西です。今日は1年間で最後の授業でした。そこでいつもとは趣向を変え、お外へ出かけました(残念ながらH君は熱のためにお休みでした)。

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 梅を見つけることがテーマで、菅原道真の「東風吹かば匂いおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」の和歌をもとにしています。歩いた場所は、幼稚園から5分10分離れたところで、幼稚園時代でいうところの第5グループの方面です。

 また歩きながら自分たちでも俳句を作ってもらいました。その時は私が口頭で書き取りました。そう言えば何年か前も同じ時期に同じことをしたのを思い出します。
 Kちゃんはがんばって自分の手で書いていました。Y君はさっそく和歌を作っていました。N君はアドレナリン全開で、なんと22句(!)も作ってくれました。

 梅は2月のものなので、ぎりぎりでしたが、何とか七、八軒、咲いている家を見つけました。「あのピンクのがそうちゃうかな?」と子どもたちの目で(実は下見をしておいて、そこを通ったというのは内緒です…)梅を見つけてもらいました。小さな花でも、立ち止まってじっと眺めました。
 風で飛んだ花びら、紅梅の色、まっすぐな枝としだれなど、微細に風情が異なり、生徒たちは自然とそれらを句の題材に取り入れていました。

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 うめがちり うめのじゅうたん はなざかり T君

一方で、梅の花が雪のようだ、という俳句を作ってくれた生徒もいました。これはむしろ散った花びらの方にこそ「見ごたえ」を感じるという共感の俳句です。詩で命を与えるというのは、こういうことを指すのかも知れません。

うめさけば きれいなひかりが できるかも N君
うめさけば やまがちかくに すぐあるよ N君

一句目は、見上げた枝に透けた西日をそのように感じてできた俳句です。二句目は、花の色で山が近くに感じられる、の意でしょうか。「山笑う」ですね。

うめがさく つぎはさくらだ たのしみだ Kちゃん
うめさいた すこしさいた もっとさけ Kちゃん

最初の句は、梅が散ることを、春の楽しみの連続と取っています。次の句もまた大変共感できます。Kちゃんの心に見えている景色は二重にあり、まだ見えない梅の景色とのコントラストが味わい深いです。

うめのいろ さくらにまけず きれいかな Y君
うめさけば はるがきたなら はるがきて さくらにまけず うめさきほこれ Y君

最初の俳句は、Kちゃんの俳句と合わせると味わい深いです。また、和歌の方は、結句の力強さがいかにもY君らしいです。

 うめさけば うめがさくほど はるをまつ S君

一年生でこれはすごいと思いました。「咲くこと」と「待つこと」が一体になって歌い込まれています。「梅一輪一輪ごとのあたたかさ」の名句をも連想します。

 昨日風がとても寒かったです。東風(こち)は春の訪れとともに吹く冷たい強風のことで、まさに今吹いている風が『こち』だと感じてもらいたくて、外に出ました。今日も30分もすると寒くなってきました。途中、近所に住む幼稚園のお友達にも出会い、「何してるの~?」ともなりました。

 帰り道は素話をしました。道真が「東風吹かば…」と歌うと一夜にして大宰府まで飛んできた「飛梅」の逸話、道真の怨霊を鎮めるために北野天満宮に「学問の神様」として祭ったことなどを話しました。「北野天満宮に行ったら、道真の亡霊に会えるかな?」と聞くので、会ったら「勉強しているかー」と聞かれるかなあ、とおどかしておきました(笑)。

 プラトンのアカデメイア派に対し、アリストテレスは「ペリパトス(逍遥)派」と称して、川べりを散歩しながら思索したそうですが、そんな感じでちょっと風流を気取ってみた一日でした。ともあれ一年が無事にしめくくれてよかったです。
 来年はみんな2年生ですね。春休みをはさんで、また会えるのを楽しみにしています。