高木です。
昨年から始まったKe君との作文クラスも、今日から二年目です。
昨年は浅野先生のクラスにいたKu君も、今年から新しく参加されることになりました。
彼らはすでに友達同士でしたが、このクラスで一緒になるのは初めてなので、やはり他のクラスと同じように、最初に自己紹介をしてもらいました。
彼らの自己紹介で流石だなと思ったのは、好きなものを発表するときには、かならずその理由やそれにまつわるエピソードも併せて紹介してくれたことです。たとえば、Ku君が好きな場所は「おばあちゃんの家」なのですが、実はおばあちゃんの家と言っても、自分の家の隣りにあり、すぐ行ける距離なのだそうです。一度妹とケンカして、家から出されてしまったとき、隣りのおばあちゃんの家に行くと、優しく迎えてくれたことがあったのだそうです。
また、Ke君の好きな場所は——これが本当に彼らしいと思うのですが——自分の家の「本棚の前」で、そこに座って長いあいだページをめくっているのも好きなのだそうです。彼が好きな本は『三国志』で、全三十巻のうち既刊の二十六巻までを何度も読み返して、あと四巻分が出版されるのが待ち遠しいのだそうです。さらに、最近有名な「赤壁の戦い」よりも、それに比べれば若干知名度は落ちるものの、個人的には曹操と袁紹の「官渡の戦い」が好きなのだそうで、その戦いのハイライトを紹介してくれたりもしました。
それぞれが、同年の友人がいる前でも堂々と、いやむしろ、友人がいるからこそより積極的に、言葉を尽くそうとしておられました。目の端に見える、発表中の自分の顔を見つめる友人のまなざしは、良い意味での緊張感を与えるようです。
前の対話が発展して長引いたこともあり、クラスの時間内には作文は終わらなかったので、あとは家で書いてきてもらうことにしました。来週発表してもらいます。
なので、もちろん私はまだ彼らの文章を読んでいません。
でも彼らが一心不乱に原稿用紙に文字を書き込んでいる姿をみて、ひとつだけ再確認できたことがありました。
それは、お互いがお互いをかなり意識していて、それがこの教室に良い緊張感を与えているということです。二人は同じ方向に横並びになって文章を綴っているわけですが、そんななか、教室に響くのはカリカリという鉛筆の音と、ときおりの消しゴムの紙擦れの音のみ。まるで試験会場のような緊張感でした。そうした雰囲気になれば誰しも隣りが気になります。そして隣りの人間が自分より頭が良いように見えてきます。Ke君はKu君の方を時々ちらちらと見ながら、自分よりも先にマスを埋めていくKu君の速度に感化されたのでしょう、はっきり言って、かなり集中されていました。もちろん書きながら丁寧に推敲をおこなっていくのが彼の美点なので、速度だけで一概に比較はできないのですが、なんにせよ、その速度が作文の重要なファクターであることは、まぎれもない事実です。またKu君も、初回ということもありますが、やはり隣りのKe君の熱気に、少なからず影響を受けているように見えました。結局、クラスの終了時間になるまで、彼らが顔を上げることは一度もありませんでした。今日はここまでにしましょう、と言うのが、本当に惜しいと感じました。そして同時に、これはいよいよ来週の作文の発表が楽しみだな、とも思いました。発表の後には、お互いの作文について、良い点、悪い点を含めて、まず自分たち同士で評価してもらおうと思います。
このクラスは今年度からマンツーマンではなくなりましたが、作文に取り組むという方針は、昨年度からなんら変わるところはありません。むしろ今日の取り組みの姿を見るかぎり、彼らなら、人数が増えてマンツーマンでなくなることは、緊張感が緩まって散漫になることではなく、切磋琢磨しお互いに刺激を与え合うことのできる仲間が増えることになるのだと、私は確信をもって言うことができます。