6/23 ことば6年生(作文)

高木です。

今日はまず、前回添削して、家で清書してきた、
音楽の感想文を発表してもらいました。
二人とも見事な発表でした。
彼らの了承を得たので、ここでも発表したいと思います。

ちなみに、以前も説明しましたが、
この取り組みでは「音」だけを聴いて感想文を書いてもらいました。
楽曲の題名や、作者がこの曲に込めた意図を先に説明するといったことは、
それにつられてしまう可能性もあるので、しませんでした。
しかし、ここでは、彼らがどれだけ真摯に純粋に「音」に向き合ったかが
イメージできるように、先に曲名だけお知らせしておきます。
彼らが聴いたのは、ショパンの “24の前奏曲 作品28 第15番 変ニ長調” 、
一般に「雨だれ」と呼ばれる曲でした。

それでは、どうぞ 。(漢字など、表記はすべてそのままです)

   はくちょうの湖
                 T・K

 はじめはゆるやかだなぁと感じた。それは湖ではくちょうが気持ち良さそうにおよいで
いるよう。気持ち良さそうなのでぼくもいっしょに泳ぎたい。同時に明るいなぁと感じた。
それは電気のように明るい。なぜなら太陽だと明るすぎて湖とのハーモニーがくずれるか
ら電気にした。
 真ん中辺りは激しいと感じた。それはおもいっきり走っている時のようだ。それでぼく
もいっしょに走りたいと思った。
 真ん中の次は暗いと感じた。それは暗い部屋の中で一人ぽつんとすわっている時のよう。
その部屋を明るくして外で遊びたいと思った。
 最後辺りは堂々としていると感じた。それは道のど真ん中で大きい人が歩いているよう
だ。それはじゃまなのでどかして、こんどは一人で堂々と歩きたい。
 最後はゆるやかにもどった。
 この曲はいろいろな感じがまざってできたおもしろい曲だと思うので、世界中のみんな
が知るようになったらこせいゆたかになると思うのでみんなもぜひこの曲を知ってほしい
と思う。

          ☆                 ☆         

さまざまにイメージを膨らませてくれています。
ひとつひとつ「音」を言葉にしていくT君の真面目な姿が思い浮かぶような感想文です。
それぞれの比喩がよく推敲されていて、とくに、前半部分の音を、
湖で白鳥が気持ち良さそうに泳いでいるような音と、
太陽ほど明るすぎない、薄弱な電気(蛍光灯)のような音という、
二つのイメージの混合で捉えてくれたところは、
この音をどうにかして言葉で表現したい、
という彼の思い入れと熱意が感じられました。
また、最後の部分を「堂々とした人」とイメージしてくれたのはT君らしいと思い、
しかもそれは邪魔なのでどかして、むしろ自分が堂々と歩きたいと書いてくれていたところは、
どちらとも受け取れる、微妙な色合いをもった、深みのある感じ方だと思いました。

          ☆                 ☆         

   ある音楽を聞いて
                 U・K

 ぼくは題名も知らない曲を聞いて「森」のような曲だと思いました。
 前半は光が差し込んでいるはなやかで平和そうな音でした。ぼくは前半から鳥がさえず
りをしている、きれいな「森」をイメージしました。ぼくはこの前半に子供が森の木で楽
しく遊んでいるような楽しい曲を入れたいと思いました。理由はありません。なんとなく
入れると良いと思いました。
 後半はとても暗く、ぜつぼう的な音だと思いました。ぼくは後半から、森のとても暗い
場所に子供たちが入って迷子になってしまいしくしく泣いているような、こわい「森」を
イメージしました。ぼくはこの後半に前半のような明るさを入れたいと思いました。なぜ
なら、ぼくは音楽をやすらぎたい時によく聞くので、やさしさが後半にもあるととてもお
ちつくからです。また、ぼくは前半と後半を逆にしたいです。なぜなら、こわくなってか
らはなやかになると、「終わり良ければすべて良し」みたいに、きれいな音になると思う
からです。
 後半の最後は前半にもどり、はなやかできれいな曲でした。ぼくはこの後半の最後に、
子供がきれいな森へもどれて良かったというはなやかな、「森」をイメージしました。ぼ
くはこの後半の最後につけ足したい音はありません。なぜなら、最後にやさしい音で終わ
るとスッキリするからです。
 ぼくはこの曲は複雑だ、と思いました。なぜなら、きれいな音になったり、こわい音に
なったりするからです。
 この曲の題名を聞いてびっくりしたり考えたりしたいです。

          ☆                 ☆         

U君は、この曲全体から「森」をイメージし、
この曲の前半の「はなやか」な部分と後半の「ぜつぼう的」な部分を、
「森」の明るい側面と暗い側面に重ねて、見事に表現してくれました。
またさらに、光の射す森で楽しく遊んでいた子供が、途中で暗闇へ迷子になってしまい、
そしてもう一度明るい森へ帰って来た、というストーリーを曲からイメージしてくれたところには、
彼の豊かな想像力と深い思索の跡が見えます。
事実、U君は、曲を聴きながら、そして聴いた後も、
眉にしわを寄せて、ときおり天井を仰ぎながら、ずっとうんうんと考えをめぐらせていました。
彼がとったメモを見せてもらうと、そこにはたくさんの書き込みがあり、
それは、この文章をまとめあげるまでに膨大な思考が費やされたことを物語っていました。

          ☆                 ☆         

それぞれの発表が終わった後、
今日は新しく、物の観察と描写に取りかかってもらいました。
物を静物画のモチーフのように目の前において、
それを絵の具ではなく言葉で描写していくのです。
できるだけ既成の名前を用いずに、そのものの形を言葉で写し取ります。
昨年度、U君に顕微鏡をモチーフにして取り組んでもらったのと、基本的に同じです。
(→  http://www.kitashirakawa.jp/yama/log/eid1433.html)
ただ、前回はモチーフの形状が複雑すぎたという反省があったので、
今回はその反省を踏まえて、より形をとりやすいものを選びました。
今回は二人なので、出来上がった作品がどのように違うのか、
それぞれの「まなざし」を発見しあうのも、とても楽しみです。